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SFP(Stochasticity in Fusion Plasmas) Workshopがドイツ・ユーリッヒ市にあるユーリッヒ研究機構にて2007年3月5日から7日まで開催されました。 この会議は核融合プラズマにおける統計的磁場構造の影響について世界各国から専門家が集まり議論することを目的として、隔年で開催されています。私は第1回から参加しており、第1回のころは大学院生でしたので月日の流れを感じています。また、今回は本会議の中心人物であるK. H. Finken博士の退職記念をかねておりました。私のポスドク時代の恩師であり、今後研究の場でお会いできなくなるのは大変残念です。 なお、日本からの参加者は私を含めて7名でした。また、2日目の夜にアーヘンにてカンファレンスディナーが開催されました。アーヘンはユーリッヒから車で15-20分程度のところにある中規模の都市です。ユーリッヒは研究所と工場くらいしかないさみしい街ですが、アーヘンはなかなか良い雰囲気の街です。

以下に会議の内容を簡単に紹介します。なお、SFP-WSのHPはこちらにありますので、興味のある方は訪れてみてください。

・トカマクプラズマ中への外部ヘリカル磁場浸透過程の数値解析:ドイツ・マックスプランク研究機構のYu博士が二流体プラズマモデル(円柱プラズマ近似、シングルモード)の非線形数値解析コードを用いて、TEXTORプラズマへの外部ヘリカル磁場の浸透過程を解析し、実験結果との比較を行い、良い一致を得ました。ポイントとなるのは、「モード周波数(プラズマ回転、電子の反磁性ドリフト周波数、外部磁場の周波数から決まる)がゼロになるところで、モードオンセットとなる」という点であって、これまでの結論(実験と線形解析との比較)と変わりはありません。一方、アルヴェン共鳴の寄与について考えている人はあまりいないようで、TAEモード励起といった実験ができるのに少々もったいないなと感じました。

・外部ヘリカル磁場によるELMの抑制実験:DIII-Dトカマク装置での実験結果をうけて、ASDEX-Upgrade、MASTにおいても同様の実験計画があることが紹介されました。また、JETでは既存のエラー磁場補正コイルを用いてELM抑制実験に取り組み始めたようで、7月のEPSにて招待講演として発表される予定です。発表を聞いていると、(1)外部ヘリカル磁場に対するプラズマ応答が存在するため、真空磁場で解析した磁力線貫通断面結果と実際の状況はかなり異なることの再認識、(2)外部ヘリカル磁場印加によってプラズマ回転速度にどのような影響がでるかについて、の2点が今になって議論されているようでした。ITERでの適用も考えているようですが、詳細なメカニズムをモデリングと合わせて解明する必要があると思われます。こういった基礎となる物理をTEXTORにて検証する際には、リミターマシンで無理してHモードプラズマを作り、ELM(かどうかもわからない)を抑制しようという実験をする意味はないと個人的に思います(ここで言っても意味がない?)。

 

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会場入り口にて全体撮影。最前列一番右にいるのがK.H. Finken博士。