研究内容

将来のエネルギー源として期待されている,磁気閉じ込め核融合に関する基礎的 な研究を行っています.この磁気閉じ込め核融合というのは,燃料となる重水素と 三重水素(水素の同位体:水素の原子核は陽子が一個,重水素は陽子が1個と 中性子が1個,三重水素は陽子が1個と中性子が2個で構成されています.)を, プラズマという状態(エネルギーが高く,原子の原子核と電子がバラバラになった 状態のこと)で閉じ込めて核融合を起こそうというものです.現在様々な装置で研 究が行われていますが,トカマク型のプラズマ閉じ込め装置での研究が最も進ん でいます.まだどの装置も研究の段階ですが,実際の核融合炉の場合,車のエン ジン等と同じで,燃料を注入してやらないと連続して運転ができません.燃料供給 の方法としては,燃料をガスのままで注入する方法,ガスを冷却し固形化(氷)し て注入する方法が今まで研究されてきました.しかし,ガスのままだと,プラズマ の表面から染み込むだけで,中心付近に燃料を注入することができません.また, 固形化して弾丸のように打ち込む方法は,ある程度深くまでは入りますが,氷の ため,途中でとけて中心までは入ってくれません.そこで,私たちは,燃料をコンパ クト・トロイド(CT)という,磁場で閉じ込められたプラズマの固まり(コンパクト・トロイド(CT))にして,注入 する方法の研究を始めました.この方法だと,世界最高では2500km/s(1秒間 に2500kmも進む速さです.私たちがつくっているのは,200km/sぐらいです.) という超高速で入射するので,中心まで到達し燃料を供給することができると考えています. それを実証するため,日本原子力研究所(原研:現 日本原子力研究開発機構)と共同で,原研にあるJFT-2M トカマク装置において,CTをトカマクプラズマに入射する実験を行ってきました.そして現在は,そこで使用していたCT入射装置を 九州大学応用力学研究所炉心理工学研究センター へ移設して,CPD装置(小型のスフェリカル・トカマク装置)へのCT入射実験を開始しました. また,核融合科学研究所(NIFS)でも,大型ヘリカル装置(LHD)へCT入射するため装置(SPICA装置)の開発を行っています.