菊池 祐介Yusuke Kikuchi

教授|博士(工学)

[mail] ykikuchi@eng.u-hyogo.ac.jp

電気電子情報工学科 電気工学コース
電気物性工学専攻 プラズマ放電工学研究グループ

脱炭素社会の実現に重要な役割を果たす電気工学分野は社会的に非常に需要の高い分野です。将来の電気工学分野の技術者・研究者を育成するために、講義では電気回路や電磁気学の基礎科目からモータや発電機などの電気機器から発電技術といった専門科目まで、産業との関わりを含めて理解できるようにしています。研究では、放電・プラズマと呼ばれる高エネルギー状態と材料の相互作用に注目しており、その研究では電気工学分野で重要なインバータ等の電力変換回路技術が重要な役割を果たしています。

SiCインバータ駆動モータの高性能化に関する研究

学べる内容・身に付くスキル

SiCインバータを用いた高電圧ナノ秒パルス電源に関する電力変換回路技術や、高電圧・放電・絶縁技術を身に付けることができます。また、電源制御、計測技術、放電シミュレーションなども経験することができます。

日本国内の電力消費の約50%がモータを通して消費されており、インバータを用いてモータの消費電力を減らすことは省エネ、地球温暖化防止に大きく貢献します。さらに、SiCなどの次世代パワー半導体デバイスを用いたインバータは高速スイッチング、高電圧化が可能となり、電気自動車の高性能化や電動航空機などの未来技術の開発に貢献します。しかし、インバータサージと呼ばれる高繰り返しナノ秒パルス電圧がモータコイルに印加される課題があり、微弱な放電が発生し電気絶縁が劣化してしまいます。本研究ではSiCインバータ電圧下の部分放電の発生メカニズムや十分な寿命を有するナノコンポジット電線の開発を通じて、インバータ駆動モータの高性能化に貢献します。また、電機メーカや材料メーカとの共同研究も実施します。

準大気圧プラズマを用いた材料表面処理(高速成膜・表面ナノ構造形成)

学べる内容・身に付くスキル

SiCインバータ電源を用いた準大気圧下の高繰り返しナノ秒パルスグロー放電生成や直流アーク放電生成技術を身に付けることができます。また、薄膜や表面ナノ構造の分析なども経験することができます。

プラズマを用いた薄膜形成などの表面処理技術は半導体分野をはじめとして様々な分野で活用されています。本研究では高価な真空装置を使わずに高いプラズマ密度の得られる準大気圧プラズマを用いて、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれる硬質膜や金属材料表面に繊維状ナノ構造を高速形成しています。図に示すように、タングステン表面はプラズマ処理により真っ黒になっており、電子顕微鏡でみると、表面に繊維状ナノ構造が出来ています。表面積は数十倍にもなり、光触媒などへの応用が期待できます。本研究の技術ではプラズマを5分照射するだけでこのような構造を形成することが可能です。