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先輩からのメッセージ


「ものづくりは、能力×熱意×考え方」

マツダ株式会社 相談役最高顧問 井巻 久一

 私が東洋工業、現在のマツダに入社したのは、当時困難と言われていたロータリーエンジンの実用化に東洋工業が果敢に挑戦していたことがその大きな理由の一つです。困難なものに全力で挑戦する姿勢に技術者としての新しくいいものを創りたいという夢を託せると思ったのです。

 その後入社以来ずっと生産技術領域の仕事に携わってきましたが、高品質の車をいかに効率的に生産出来るかに挑戦し続けてきました。世界中でどこにも負けない生産技術力を持つことを目指して来たのです。現在のマツダの生産工場には私が入社した当時とは比較にならないほど多くの自動化されたロボットが並びIT 技術の活用も進んでいます。しかし、機械は勝手に動くことは出来ません。人がうまく使いこなせなければ高価な機械も宝の持ち腐れであり、安価な機械でも人の知恵次第ではすばらしい仕事をしてくれます。また、自動化が進んだ工場が良い工場とは思っていません。そこで働く人の知恵がたくさん入り、手作りの改善がどんどん進み、働く人が工場に愛情を持っている、そんな工場こそ私の理想です。つまり「ものづくり」の基本は「人づくり」なのです。

 そして、この何十年、「人づくり」に取り組んできましたが、相談役に退いた今も、その対象こそ変わるものの、基本の「人づくり」は変化していません。仕事が出来るかどうかは、その人の能力×熱意×考え方に掛かっています。能力があっても何も考えず過去を踏襲するだけでは、挑戦的な仕事は出来ず進歩もありません。常に前向きで諦めない気持ちで取り組めば不可能も可能になる筈です。要するに“考え方”こそ最も重要。能力×熱意×考え方を最大にして「ものづくり」への夢を実現していきましょう。

井巻 久一 相談役最高顧問 略歴
1942 年、兵庫県生まれ。
1965 年に姫路工業大学機械工学科を卒業して東洋工業株式会社(現在のマツダ株式会社)に入社。
入社後は一貫して生産技術領域の業務に携わり、1993 年6 月に取締役技術本部長、1996 年6 月に取締役本社工場長に就任。
その後、常務取締役、専務取締役、代表取締役副社長就任を経て、2003 年8 月に4 代続いたフォード出身社長の後を継いで代表取締役社長兼CEO に就任。2006 年6 月から会長職を兼務し、2008年には代表取締役会長、2010年より相談役最高顧問に就任し現在に至っている。
2005年11 月に日本自動車研究者・ジャーナリスト会議(RJC)から2006 年RJC パーソン・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

「目標を持った社会人、研究者として巣立つための礎」

東北大学総長 井上 明久

 高校生の皆様には、将来の人生行路に無限の可能性、夢、志を抱いている事と思います。それらの内容は漠然としているとしても、諸君自身が考え歩もうとしている方向は、これまでの体験や家庭・地域環境を踏まえたものであり、個性に合っている事も充分に考えられ、重要視しても良いと思います。私自身は、現在東北大学総長として、東北大学全体の教育、研究、社会貢献、キャンパス環境、組織・経営の最高責任者としての任に当たっています。東北大学には総合大学として人文・社会学系、理工学系、医学・薬学・農学・生命科学系などの広範な学部があり、他の学部と比較して工学系学部の特徴を理解できる立場にあると思っています。ここで、工学系学部の魅力、面白さについて私が日頃感じていることを紹介したいと思います。

 私は約38年前に姫路工業大学金属材料工学科を卒業後、東北大学大学院工学研究科に進学しました。姫路工業大学(現在、兵庫県立大学工学部)での4年間の勉学が私の研究・教育者としての基礎を形成したものと思っています。楽しかった思い出として、自然科学の基礎を幅広く自由に学べたこと、この基礎的勉学成果を礎にして専門分野の科学技術の基礎を学び、実社会と専門分野の学術面での関係の理解を深めることができたことです。私自身金属材料工学科に入学した際に、特段の強い思い入れがあったわけではありませんが、子供時代からの地域環境に影響を受けたものと思っています。大学での教養・専門履修課目の多くは私の知的好奇心を触発し、未知な物事への知的探求心を芽生えさせてくれたものと思っております。先生方の熱意溢れる育成・指導姿勢と充実した履修課目構成には感謝しております。また、団塊の世代の多くの素晴らしい個性溢れる同級生と一緒に学べた事も楽しい思い出となっています。日々未知のことを楽しく学ぶことができ、目標を持った社会人、研究者として巣立つための礎を築く機会を提供していただけた事に深く感謝しています。この人材育成の熱意溢れる姿勢は今日も受け継がれていると確信しています。是非大学を訪問して高校生諸君の目で確認してみてください。母校の益々の発展を祈念致しております。

井上 明久 総長 略歴
1947年、兵庫県生まれ。
1970年姫路工業大学金属材料工学科卒業、
1972年東北大学大学院工学研究科金属材料工学専攻修士課程修了、
1975年同博士課程修了後、1976年東北大学金属材料研究所助手、同助教授を経て1990年同教授、2000年同所長に就任と同時に、東北大学学際科学研究センター長、東北大学低温科学研究センター長を兼務。
東北大学総長補佐、東北大学副学長を経て2006年東北大学総長に就任。
同年日本学士院会員に選出され、現在に至っている。
その間、AT&Tベル研究所客員研究員、スエーデン国立金属研究所研究員、スエーデン王立工科大学客員研究員、文部省科学官、文部科学省科学技術学術審議会専門・臨時委員、文部科学省文化審議会委員等を歴任している。