シャストリーサザランド格子上S=1/2XXZモデルの1/2磁化プラトー

通常、絶縁体物質の表面を1原子単位できれいに作ると、その表面に金属的性質が顔を出す場合がある。しかしその金属的振る舞いは結晶欠陥や不純物などの電子散乱に対して不安定であることが知られている。近年、バルクの性質は絶縁体だがその表面に不純物に対して安定な金属状態を持つトポロジカル絶縁体と呼ばれるものが見つかっている。その機構はバルク中の電子の波動関数が持つトポロジカルな性質によって表面の金属状態が守られていることに起因する。このトポロジカル絶縁体と似た性質を持つ系として1次元量子スピン反強磁性模型が知られている。この模型自身は1990年代から盛んに研究が行われており対応する磁性体が数多く見つかっている。一方2次元、3次元の量子スピン模型でも特異な表面・端状態を持つと期待される幾つかの模型が提案されているが、対応する磁性体を合成することは困難であることなど、殆ど定量的な研究は行われていない。本研究では実現可能な2次元磁性体に注目し、その磁性体模型で現れる表面、端状態の性質に調べた。その結果、予想される端状態(1次元のスピン模型で実現する状態)とは異なる振る舞いを示すパラメータ領域が存在することが分かった。

図1:端のスピン相関関数の結果でどちらの場合もバルクはエネルギーギャップの開いた状態(絶縁体)だが端はギャップレス状態(金属)状態となっている 。左側は1次元のスピン模型で実現する状態が現れるパラメータの結果。右側は異なる場合。相関関数の減衰冪の振る舞いが異なる。
図2:ギャップレス端状態を持つ系の磁場中磁化プロファイル。バルクはギャップの開いた状態なので磁化はほとんど立たない。


参考文献

[1]T.S. and M. Sato, Phys. Rev. B 86, 224411 (2012).