前の項では,硬さと単位について話をし,硬さの単位は応力と同じ次元であると述べました.

ここでは,もう少し説明を加えたいと思います.

繰り返しになりますが,硬さとは試料に加えた荷重を試料にできたくぼみの面積で割った値のことを言い,通常硬さに単位はつきません.この時,正確には硬さの単位は「kgf/mm2になっています.ここでは,本当にそうなのかについて考えてみましょう.

例えば,試験荷重F(N)で試験面にくぼみをつけたとき,くぼみの表面積をS(mm2)とすると,この時の硬さは以下の式で求めることができます.

この時の荷重と表面積の単位については,荷重はN,表面積はmm2ですので,ここから求められる硬さの単位は,N/mm2=MPaとなるところですが,式の頭に0.102という係数がついています.

Nkgfとの間には「1N=0.102kgfという関係がありますので,これより考えると上の式において荷重はkgfで表され,結果この時の硬さの単位は,kgf/mm2となっていることになります.上に示した硬さの式は定義式ですので,通常単位をつけないという場合の硬さの単位kgf/mm2ということになります.

以上のことから,硬さの値に何も単位がない(通常のケース)場合は,単位はkgf/mm2と考えるべきです.

上の定義式をもとに,硬さの単位をSI単位系に準じて「MPa」に換算するケースもあると思いますが,このような場合は必ず単位として「MPa」を使ったことを明記してあるはずです.