SPring-8夏の学校2006

はじめに
私達は7月7日から10日の4日間SPring−8で開催された、SPring-8夏の学校に参加しました。ここでは夏の学校の大まかな内容を紹介します。

SPring-8夏の学校とは
SPring-8は世界で最も輝度の高いX線を発生できる第三世代の大型放射光施設であり、素粒子物理、物性化学、物質科学、生命科学、医学などの幅広い分野で研究が行われています。特に、国の基本科学施策であるナノテクやたんぱく質構造解析などで重大な成果が次々と生み出されています。また、次世代半導体微細加工技術や自動車触媒開発に代表されるような産業利用も積極的に進められています。SPring-8夏の学校は、学部および大学院修士課程の学生を主な対象とし、次世代の放射光利用研究者の発掘と育成を目的として、(財)高輝度科学研究センターと兵庫県立大の共催で毎年開校され、今年で6回目になります。SPring-8で活躍する最前線の研究者による講義と実習を組み合わせて行うことにより、放射光の原理と利用研究成果を学ぶとともに、放射光を使う実習によって、その魅力を十分に味わえるようにカリキュラムが組まれています。

夏の学校流れ
初日のプログラムは、午前中に安全講習を受け、昼から基礎講座の講義を受けました。講義では、「放射光の発生」、「挿入光源」、「ビームライン」、「X線ビームの強度測定」について学びました。
ここでは、SPring-8を使うにあたっての必要最低限の知識をえました。


夜間のプログラムとしては、一般の見学者では立ち入りのできないSPring-8施設内の見学をしました。その際SPring-8の研究者に丁寧な説明をしていただいて、SPring-8で行われている最先端の研究
について知ることができました。今、自分たちが研究している事と関係する実験などもあり、大変興味をもってSPring-8内を見学することができました。
ちなみに、SPring-8一周は1.5Kmで、それを2時間かけて周りました。


2、3日目は、4〜5人のグループに分かれて実習を行いました。最先端の研究を行っている研究者や大学院生と積極的に話をしながら実験を行えたので、放射光科学や大学院の様子について楽しく学ぶことができました。
BL10XUではNaClに圧力を印加し、X線回析を利用した結晶構造解析を行って物質の高圧現象を観察しました。高圧にする事によりNaClの面心立方構造から体心立方構造への変化を観察する事ができ、非常に良い実習でした。
BL20XUでは硬X線をフレネルゾーンプレートを用いて集光し、その様子を観察する実習を行いました。唯一の医学利用実験施設での実験だったのですが、研究発表としていろいろな画像が展示されており医学の分野にどのように放射光施設が役立っているのか勉強になりました。
BL23SUでは軟X線を使ってGeの表面観察を行いました。このビームラインは軟X線を使っているので、気圧をできる限り下げることなどに注意して実習をしました。この実習は今回夏の学校のためだけの実験ではなく、今回でたデータを基にここで研究する原研の人たちが実験を重ねていくようです。
BL24XUでは硬X線を使ってマイクロビームを作り、それを使ってSiO2/Si膜エッジにおける歪みの測定を行いました。ここは兵庫県立大学理学部の方たちが研究しているビームラインだったので、院生などもいて、大学院や大学のことについてもいろいろ知ることができました。


2日目の夜間のプログラムとしてはNS(ニュースバル)とSCSS(SPring-8 Compact SASE Source)の見学を行いました。
NSでの見学は時々NSに行くということもあって、興味が沸きにくかったですが、SCSSでの見学は大変興味深いものでした。

3日目の夜には懇親会のイベントがあり、研究者や他大学の生徒とより交流を深められました。

4日目は応用講座の講義を4時間受けました。「生体イメージング」、「核共鳴弾性・非弾性散乱」、「高温・高圧科学」、「光電子分光」の4つの講義でした。
応用講座では基礎講座とは違い、より日常にかかわるような講義であったので、大変興味深く講義を受けることできました。

感想
今回SPring-8夏の学校を終えて、放射光や施設の基礎から応用まで幅広く学べ、放射光の利用や将来について興味がもてました。今後卒業研究において、NSやALSなど大型放射光施設を利用する機会があるので良い経験になりました。
実習を通して、普段関わることのない研究者や他大学の生徒との交流をもてたことも、私たちにとってとても刺激になりました。