四つの空気ばねで支えられた卓上型除振台の制振性能
M2 大西 健斗
teramae

精密検査において外部から検査器具への振動を防ぐために卓上型除振台が用いられる. この卓上型除振台は,固有振動数を低く抑えられることと設計の自由度が高いことの2点から,メインタンクと補助タンクを細管で繋いだ管路式空気ばねが減衰機構に採用されることが多い. この管路式空気ばねは,空気ばね支持系そのものが1自由度振動系であるにも関わらず2次の共振点が現れることがあり,この2次共振振動数は管路が長くなるに従って低くなることが知られている. そのため,2次共振を低周波数域で発生させないように市販されている除振台では管をできるだけ短く設計されることが多く,設計の自由度の高さを活かしきれていないのが現状である. そこで,本研究では,管路式空気ばねを有する卓上型除振台において,制振性能に及ぼす管路長さの影響を理論と実験の両面から調査する. そして,最終的には,管路が長い場合における制振性能の向上(二次共振ピークの低減)を目指す. 実験では本実験のために自作した除振台を使用し,理論解析では,MatlabやFortranで作成されたプログラムを改良して計算を行っている.

管路式空気ばね支持系の振動特性
M2 田路 正敏

空気ばねはバスや自動車,鉄道車両のサスペンションや,他には産業用機器の除振台などで利用されている.空気ばねは名前の通り,空気を動作流体とするばねのことである. 金属ばねと比較して優れている点は,高さの調節が容易であることや,高周波の振動に対して優れた除振性を持つことなどが挙げられる. 管路式空気ばねは,荷重を支えるメインタンクと,もう一つの補助空気室を細管でつなぐ構造になっている. 二つの空気室をオリフィスで接続したものとは異なり,空気と細管壁面の摩擦抵抗による減衰力が支配的となる. この形式の空気ばねは,メインタンクと補助空気室を細管で繋ぐことで,ばね自身の高さを低く設計することができ,設置上の自由度が広がるというメリットがある. 問題となっているのは,管路式空気ばねは空気の流れが複雑で,振動特性の正確な計算方法が確立されていないことである. これまで空気の流れを計算していたのは円管のみであったが,空気室内部の流動も考慮することで,定常加振に対する周波数応答を精確に計算する.

慣性気体軸受のCFD解析
M2 寺前 佳祐
teramae

固体NMR装置とは核磁気共鳴現象を利用した固体試料分析装置であり試料管を高速回転させることで,物質成分を分析する装置のことである.核磁気共鳴現象(NMR,Nuclear magnetic Resonance)とは,外部静磁場におかれた原子核が固有の周波数の電磁波と相互作用する現象である.この現象を利用することで高速回転している試料管を外部静磁場中におき,固有の電磁波を与えることでNMRが信号として現れ,それをFourier変換することである周波数でピークを持ったケミカルシフトを得ることができる. 通常,圧力を給気し軸を浮かせるタイプの軸受は静圧形と呼ばれ,軸受すきまが小さいものであるが,この固体NMRは実用上試料管を頻繁に取り換えるため,軸受すきまを広くとった慣性気体ラジアル軸受が用いられる. 固体NMR装置は軸である試料管の回転が速くなるほど質の良い結果が得られるため, さらなる高速回転化が求められている.本研究では,軸受の給気孔位置を回転方向に傾斜させた給気モデル(これをオフセット給気と呼ぶ)によって回転数向上を目指すことにした. また,解析方法としてはCFD(Computational Fluid Dynamics,数値流体力学)解析による計算を用いて軸受内の流路を解析することとする.最終的には,オフセット給気慣性気体軸受の特性を解明し,固体NMR装置の慣性気体軸受設計に利用できることを目標とする.

軸方向スロット絞りを有する静圧気体軸受の開発
M2 中塚 将也

静圧気体軸受は,気体の粘性を利用して軸受すきま内の圧力を高め,剛性を与えるタイプの軸受である. この軸受は,優れた特徴をもっており,高度技術が要求される条件に十分対応できる軸受として多くの分野で採用されてい る. 近年,大偏心回転体を支持するための軸受として,スロット絞り式静圧気体軸受の研究が進められきた. しかし,この軸受は数十$\mu$mのスロットすきまを軸受面中央に配置する形状であるため,軸を傾けようとする偏負荷が大 きく作用すると, 端部で焼き付き等の損傷が生じる可能性がある. そこで本研究では角剛性および安定性を向上させるため,軸受長さ方向に伸びた長方形スロット絞りを円周方向に複数配置 した静圧気体軸受を考案した(以後, 軸方向型). これを実現するために,複数の絞りを円周上に配置した試験軸受をプラスチック材料で製作し,性能試験および数値計算に より軸受性能を評価する. 現在, 軸受静特性についての研究を進めており, 一般的な静特性については実験値と解析値に定量的な一致を見せることが 分かった. そのため次の段階としては, 軸の傾きに対する特性を把握するために角剛性試験および解析からの検証を行う. 今日に至るまで, 軸の傾きに対する剛性を検証した例はなく, 本研究が初めて行う事例となる. そのため, Divergence Formulation Method を用いた解析を用い, 従来形1列スロット絞り式, 2列スロット絞り式, 軸 方向形の三種類の 静特性, 偏荷重特性を調査し, 軸方向形軸受の各特性に関する優位性を確認することで, 開発を進めていく.

二本の管路を有する管路式空気ばね支持系の振動特性解析
M1 馬場 雄一
baba

生活の中で機械化が進む一方で,様々な分野で振動は避けられない問題となっている. 特に工学分野でいうと,振動が機械に与える影響は大きく,振動によって騒音問題や機械の故障が引き起こされることから金属ばねや空気ばねなどの除振装置が用いられる. 本研究では空気ばねの中でも管路式空気ばねについて研究を行うが,先行研究によって「加振振幅を変化させた影響」「管路弾性の影響」「管路長さの影響」「管路が曲がっている場合の影響」など他にも様々な研究が行われている.昨年度は,上部質量を変化させた際に振動特性にどのような影響を与えるのか調査を行った.今年度からはメインタンクに対して補助タンクを 2 つ併設した実験装置を作成し,どのような振動特性が得られるか実験と解析の両面から調査を行う. また,管路が 1 本の場合と比較し,管路を 2 本にする有意性があるのか調査を行う.

ALE法に基づいたオイルダンパ内部流れの数値解析
B4 仲村 鴻輝 B4 朝野 毅士
asano

機械や構造物で起こる振動への対策はなくてはならないものとなっており, その対策の1つとして, 減衰を付与するために除振装置を取り付けるという方法がある. また, 除振装置には様々な種類のものが存在する. その中でもオイルダンパは, 大きさに対して減衰性能が高く, 条件を変えることによって比較的自由に減衰係数を設定できるため, 広く用いられている. しかしオイルダンパは, 内部流れが複雑であり, 基礎方程式であるNavier-Stokes方程式が非線形となることから,限られた条件でしか厳密解を得ることが出来ない. このような理由から, 本研究では, オイルダンパの内部流れに対して流れの数値シミュレーションを適用することにより, その減衰性能の近似的な解を得ることをことを目的とする.

二重動吸振器の最適化設計
B4 金銅 勇気 B4 水川 凱斗
kondou

動吸振器は振動している対象物に取り付けることにより, 対象物の振動を吸収し, 対象物の振動を抑制することができる. 振動は機械, 建造物に対してその振動によって害となる. 特に物体には固有振動数があり, 振動数と対象物の固有振動数が近づくと 共振が発生し, 大きな振動が発生する. それを取り除くために動吸振器が使われる. 主に自動車, ゴンドラ, 橋などに使用されており, 動吸振器が振動することにより, 人に振動を伝えにくくする. 本研究は, 動吸振器の各パラメータの最適値を求め, 最適設計を目指す. 昨年度の研究により直列と並列の二重動吸振器のコンプライアンス 伝達関数の最適解が求まった. 次に絶対変位のモビリティ伝達関数(速度変位/励振力) の最適解を求めることが目標である. これの最小値を求めることにより, 振動による騒音の解消にもつながる.

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