樹脂材料はトライボロジー材料として利用が急拡大していますが、潤滑特性は未解明な部分が多いです。我々は摩擦界面構造をマルチスケールで解析することで、樹脂材料の詳細な摩擦・摩耗メカニズムを明らかにすることを目指しています。
樹脂の詳細な摩擦・摩耗メカニズムが明らかになれば、金属部品の代替品として樹脂材料の利用が今以上に拡大し、SDGsに大きく貢献できると考えられます。
ポリアセタール(POM)は、コストと機械的強度のバランスから代表的なエンジニアリングプラスチック(エンプラ)として広く利用されています。さらに自己潤滑性を有することから、近年エンプラ系しゅう動材料の代表的な存在となっています。しかし、 POMのトライボロジーの詳細は未解明な部分も多く、一般的に金属材料よりも相手材への移着および摩耗紛の排出が顕著であることから、金属材料とは潤滑特性が大きく異なると予想されます。
トライボロジー現象は摩擦界面で生じることから、摩擦界面構造は摩擦・摩耗メカニズムに大きな影響を及ぼします。よって、潤滑特性の解明には、摩擦界面の詳細な観察が求められます。そこで私たちは、摩擦界面のその場観察を行いました。その結果、POMの摩擦・摩耗メカニズムには、バルクPOMだけでなく再凝着摩耗紛が大きく影響することが示唆されました。よって、それぞれバルクPOMと再凝着摩耗紛において、マクロスケールでの形状の違いからナノスケールでの結晶構造の違いを明らかにし、マクロからナノ構造のどの要素がPOMの低摩擦・低摩耗に好・悪影響を与えるかを明らかにすることを目指しています。
樹脂の詳細な摩擦・摩耗メカニズムが明確になれば、摩擦・摩耗の制御方法を提案することが可能となります。さらに低摩擦・低摩耗な新樹脂材料の開発へとつながり、樹脂のトライボ材料としての実用化がさらに促進されます。その結果、現時点では実用化が難しい特殊環境での樹脂利用も可能となり、自動車や電子電機機器だけでなく、航空宇宙産業や海洋産業においても、金属部品の代替品として樹脂材料の利用が拡大し、SDGsに大きく貢献できます。
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