高効率な変圧器、モーターなどに不可欠な電磁鋼板のニーズが高まっています。我々は、低損失な電磁鋼板の作製研究に取り組んでいます。
圧延により結晶配向制御した{100}方位(Cube方位)配向鉄板を開発しました。この結晶配向技術を用いることで、低鉄損な二方向性電磁鋼板の開発につながる可能性があります。
世界中で電力需要が高まっており、日本では内燃機関で走る自動車を電気自動車(BEV)に置き換えた場合、夏の電力ピーク時の電力不足が指摘されています。それゆえ、国内の発電能力を今以上に増やす必要があります。電力送電網は送電線、変電所、配電線から構成されており、電力送電には変圧器が不可欠です。電力送配電では、変圧器、送電線においてエネルギー損失が生じています。変電には変圧器が不可欠で、現在の変圧器には一方向性電磁鋼板({110}方位(Goss方位)配向電磁鋼板)が使用されています。二方向性電磁鋼板(Cube方位配向電磁鋼板)を用いた変圧器は、変電所での損失を抑制し、生み出した電気を効率よく利用することができます。
圧延法により作製される鉄板の優先方位は(111)です。我々の結晶配向技術を用いることで鉄板をCube方位に結晶配向させることができます。結晶をCube方位配向させた二方向性電磁鋼板を変圧器の鉄心に用いることで、変圧器でのエネルギー損失を抑制できます。これにより生み出した電力の有効利用が可能となります。
具体的には、低損失な電磁鋼板の開発、より高効率な変圧器の開発、より高効率なモーターの開発といった研究に結びつくと考えられます。
研究情報 | |
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ジャーナル | MATERIALS TRANSACTIONS (Mater. Trans.) |
タイトル | EBSD Observation of Pure Iron with Near-Cube Orientation Fabricated by Cold Rolling and Annealing |
著者 | Daisuke Okai, Masatoshi Yae, Atsushi Yamamoto, Toshiya Doi |
メンバー | 岡井大祐(工、材料組織学) |
URL | https://doi.org/10.2320/matertrans.M2016443 |