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[ものづくり]

分子化学の知見に立脚した無機ナノ材料の機能開拓

大学院工学研究科 応用化学専攻 助教 鈴木 航

サイズが2 nm以下の金属超微粒子である金属ナノクラスターは、よりサイズの大きな金属ナノ粒子とは大きく異なる反応性や発光特性を有する興味深い物質群です。我々は、分子化学の知見を活用して金属ナノクラスターの機能を、分子レベルで理解・制御することを目指しています。

有機・金属錯体化学をはじめとする分子化学の知見を、代表的な金属ナノクラスターである金ナノクラスターの構造・物性評価に活用することで、無機ナノ材料表面で起こる化学反応を分子レベルで解明することに成功しました。

背景

金ナノクラスターは優れた酸素還元触媒や二酸化炭素還元触媒として機能することが知られています。しかし、金ナノクラスターと酸素分子のような小分子との反応を制御する要因や反応機構については実験的な証拠が乏しく、未解明な点が多いのが現状です。反応機構の詳細な理解は新たな触媒を設計する上で重要な指針となるため、その解明が求められています。

詳細

材料自体はナノ材料であり「非分子」であるものの、化学反応が起こる表面では、金属元素・イオンと小分子が反応しています。このことから、「局所的には分子化学として扱うことができる」と考え、金ナノクラスターによる酸素還元反応を分子論的に評価しました。その結果、酸素分子が吸着する反応サイトの詳細を明らかにするとともに、その吸着挙動ならびに後続の還元反応に影響を与える因子を定量的に明らかにしました。特に、反応サイト近傍に存在する有機分子(配位子)の電子的・立体効果が反応性を制御する上で重要であり、無機ナノ材料表面の配位子設計の重要性を提唱しました。

展望

本研究自体は分子化学に立脚した基礎研究ですが、ここから得られる知見をもとに優れた触媒を開発する上での設計指針が提供可能です。また、酸素還元反応に限らず、社会的要請も大きい二酸化炭素還元反応のような別の反応の反応機構解明への展開も計画しています。

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大学院工学研究科 応用化学専攻 助教 鈴木 航

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https://researchmap.jp/suzukiw

研究者情報

研究情報
ジャーナル Chemical Science, 2024, 15, 18896. doi.org/10.1039/D4SC02995J
タイトル Quantitative analysis of air-oxidation reactions of thiolate-protected gold nanoclusters
著者 W. Suzuki, R. Takahata, Y. Mizuhata, N. Tokitoh, S. Xue, T. Teranishi
メンバー 鈴木航 (応用化学)
URL https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2024/sc/d4sc02995j#!divAbstract

研究者マップ

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