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[ものづくり]

微量液体の高感度レーザー分析技術の開発

大学院工学研究科 化学工学専攻 助教 松本 歩

貴金属ナノ粒子をつけたシリコンを過酸化水素を含むフッ化水素酸水溶液に浸すと、粒子直下のシリコンが優先的に溶解し、特徴的な構造を持つ多孔質シリコンが得られます。私たちはこの多孔質シリコンをレーザー分析の基板として応用することで、新たな分析技術の開発に取り組んでいます。

金属援用エッチングにより作製した多孔質シリコンをレーザー誘起ブレークダウン分光の基板として利用することで、微量液体中の成分を高感度かつ高精度に分析できる技術を開発しました。

背景

レーザーアブレーションで生成されるプラズマの発光分光分析により、試料の元素を同定することができます。この手法はレーザー誘起ブレークダウン分光(LIBS)と呼ばれ、試料の元素をその場で瞬時に分析できることから、極限環境における現場分析や工業プロセスのモニタリングなどへの応用が期待されています。現在開発されているLIBS装置の多くは固体試料の分析を対象としていますが、液体試料を効率良く分析できるようになれば、LIBSの応用の可能性がさらに広がります。

詳細

私たちは、固体基板上に試料溶液を滴下し、溶媒を蒸発させた後、蒸発乾固物にレーザーを照射して分析を行う手法に着目しました。このとき、貴金属ナノ粒子の置換析出と金属援用エッチングの無電解プロセスにより作製した多孔質シリコンを基板として用いると、従来の平滑基板と比べて、LIBSの信号強度が著しく増大するとともに、レーザー照射位置による信号のばらつきが抑制されることがわかりました。これは、基板表面の多孔質構造により、プラズマの生成効率が向上するとともに、蒸発乾固物の分布が均一になるためです。

展望

本手法では、ごく微量の試料溶液と小型レーザー装置を用いて、溶存元素の濃度を簡便かつ迅速に測定することが可能です。この特長を活かして、毒性の高い溶液を用いる表面処理プロセスへの応用を目指しています。溶液中の成分を定期的に調べることにより、溶液の交換時期の適切な判断や異常検知が可能になり、生産効率の向上が期待されます。

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大学院工学研究科 化学工学専攻 助教 松本 歩

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https://researchmap.jp/ayumuchan

研究者情報

研究情報
ジャーナル Journal of Analytical Atomic Spectrometry 39, 2532 (2024); doi: 10.1039/D4JA00177J
タイトル Quantitative analysis of niobium in electropolishing solution by laser-induced breakdown spectroscopy using porous silicon.
著者 A. Matsumoto, Y. Toyama, Y. Shimazu, K. Nii, Y. Ida, and S. Yae
メンバー 松本 歩(工、化学工学)、八重真治(工、化学工学)
URL https://doi.org/10.1039/D4JA00177J
特許情報
文献番号 特開2020-193855
出願番号 特願2019-099115
出願日 2019年5月28日
公知日 2020年12月3日
発明の名称 測定用基材及びその製造方法、並びに発光分光分析装置及び発光分光分析方法
出願人 公立大学法人兵庫県立大学
発明者 松本 歩、八重真治

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