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[ものづくり]

伝搬演算子を活用した
有限要素法による光導波路解析の効率化

大学院工学研究科 電子情報工学専攻 准教授 森本佳太

光デバイスの性能を飛躍的に高めるためにはコンピュータ・シミュレーションの活用が不可欠であり、光を用いた情報処理や通信の新たな可能性を展開するための高性能数値シミュレーション技術の開発に取り組んでいます。

私たちは、大規模な電磁界シミュレーションが必要となる光デバイスの解析や設計において、今後さらに重要性が増す実用的なソフトウェア技術の開発を行っています。本研究では、伝搬演算子技術を有限要素法(FEM)に組み込み、光導波路解析を効率化する手法を提案しています。

背景

データトラフィックの増加に伴い、現行技術だけでの通信の高速化・大容量化には限界が見え始めています。そのため、次世代通信システムでは光導波路デバイスの高性能化が不可欠です。また、電子デバイスの消費電力や発熱の問題を受け、電子回路の演算処理を光技術で代替する可能性も議論されています。近年、電磁界シミュレーションによる微細構造の最適化により、優れた特性を持つデバイスが提案されていますが、大域的な探索を伴う設計では、必要な計算時間や計算機メモリが膨大になる課題があります。そのため、実用化に向けては、高速かつ高精度な解析技術の開発が求められます。

詳細

伝搬演算子は光波の伝搬方向に垂直な断面領域を離散化して導出し、断面の電磁界分布に作用させることで任意の光波伝搬を評価します。この手法により解析次元が1次下がり、固有モード算出が不要となるため、大幅に計算効率が向上します。私たちはこれまでに不連続導波路の解析で有効性が確認された伝搬演算子を発展させ、FEM解析全体の効率化を目指しました。特に、開領域問題における境界処理に伝搬演算子を導入することで、吸収境界条件を用いずに解析領域を終端し、必要領域を縮小して計算効率を向上させます。また、FEM行列を再編成して散乱演算子を導出し、大規模連立方程式の解法を省略するとともに、接続計算により反復計算不要の領域分割法を実現しました。

展望

本解析法は、更新された領域の散乱演算子のみを再計算すれば全体構造の特性解析が可能であり、最適設計との親和性が高い数値解析法です。将来的には製造プロセスを含む設計者不要の自動最適設計システムの構築を目指します。また今後の発展が期待される光コンピューティングなどのデータ処理回路への適用や、メタマテリアルによる新たな材料特性を持つ素子の開発、マルチフィジックス解析を通じた最適設計など、大規模設計問題への展開が期待できます。

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大学院工学研究科 電子情報工学専攻 准教授 森本佳太

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https://researchmap.jp/KeitaMorimoto

研究者情報

研究情報
ジャーナル 電子情報通信学会論文誌 C
タイトル 伝搬演算子を活用した有限要素法による光導波路解析の効率化
著者 森本 佳太, 井口 亜希人, 辻 寧英
メンバー 森本 佳太(工、電子情報)
URL https://doi.org/10.14923/transelej.2022JCI0021
備考 招待論文

研究者マップ

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