

めっきにおける水素の問題と素地金属の水素脆化の解明
電解および無電解めっきは水溶液中で材料の表面に金属薄膜を形成する技術であり、電子部品や機械部品の表面処理に応用されています。これらの応用上では、めっき膜中に共析した水素によってさまざまな弊害が引き起こされます。微量で拡散しやすいめっき膜中の水素の挙動を捉えることはこれまで困難でしたが、昇温脱離ガス分析、電気化学的水素透過法、X線結晶構造解析、および透過電子顕微鏡観察などの解析技術を駆使することによって水素の存在状態とその影響を解明することが可能になりつつあります。
めっきは、パソコンやスマートフォンなどの電子機器内部のLSIとプリント基板の銅配線形成、微細な電子部品実装用の表面処理、大型機械部品の防食と表面硬化のための表面処理、および宝飾品の製造などに幅広く応用されています。めっきの過程では金属原子の析出と同時に水素発生が起こり、その一部は水素原子として膜中に共析してひび割れ、ふくれやナノボイドを発生させるだけでなく、物性の経時変化や素地金属の水素脆化を引き起こす原因になります。これらの問題を解決するためには、めっき膜中の水素の挙動を解明しなければなりません。
我々の研究室では、めっき膜中に共析した水素について昇温脱離ガス分析による水素の共析量と存在状態(格子間、空孔、粒界、ナノボイド)の解析するとともに、X線回折による結晶構造解析、および透過電子顕微鏡によるナノ構造観察を行っています。これまでに、水素の共析とともに生成した多量の原子空孔によって銅電析膜の室温粒成長が進行すること、格子間水素によって銅めっき膜に圧縮応力が生じること、および無電解ニッケルめっき後のアルミニウム合金中に残存する空孔‐水素クラスターが水素脆化を引き起こす原因になることなどを明らかにしました。
最近では、液中で電極表面を透過電子顕微鏡で観察することができる特殊な試料ホルダーを導入し、めっき膜の成長過程における水素発生の様子を観察することに挑戦しています。めっき膜中の水素の挙動を解明し、水素によるめっき膜の不具合と素地金属の水素脆化を解決することを目指しています。さらにこれらの成果は次世代の高速通信機器の開発と安全な水素インフラの構築に貢献することが期待されます。
| 研究情報 | ||
|---|---|---|
| ジャーナル | 日本金属学会誌, 88, 233–238 (2024). | |
| タイトル | 塩化物浴から電析した白金膜の微細構造に及ぼす共析水素の影響 | |
| 著者 | 福室直樹,木下剛志,橋本倫也,八重真治 | |
| メンバー | 福室直樹(工、化学工学),橋本倫也(工、化学工学),八重真治(工、化学工学) | |
| URL | https://doi.org/10.2320/jinstmet.J202407 | |
| 共同・受託 研究実績 | ||
| 期間 | 2019年4月~2021年3月 | |
| テーマ | アルミニウム合金の高精度表面改質による耐水素脆性の改善 | |
| 相手先 | 公益財団法人軽金属奨学会 | |
| 予算 | 総額24,000千円(分担額7,000千円) | |
| 備考 | 大阪大学と広島工業大学との共同研究 | |
| 報告学会、展示会等の情報、 その他関連情報 | 日本金属学会、表面技術協会、軽金属学会 | |