DV-Xα研究協会「夏の学校」2006
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<はじめに> |
私たちは,2006年の8月17日〜8月21日の間に岐阜県の下呂温泉で開催されたDV-Xα研究協会「夏の学校」に参加してきました。ここでは,夏の学校の様子を簡単に紹介していきます。 |
<DV-Xα研究協会「夏の学校」とは> |
現代の科学・技術は材料科学・技術の基に成り立っているといっても過言ではありません。先端的な技術においては新しい材料開発が鍵を握っていることが非常に多いです。新材料の開発・研究には新しい観点に基づいた手法が求められています。そのため,これからの物質・材料学において量子論の観点に立って研究を進めることがますます重要になってくると考えられます。近年のコンピューター技術の進歩により高速コンピューターが手軽に使用できるようになり,それに対応して量子力学計算のソフトの開発が進み,実際の物質・材料の量子力学計算が以前よりはずっと身近なものとなっています。そこで,現在までに開発された計算技術を有効に利用することが必要となってきます。それと同時に新しい材料学の発展のための理論手法の開発にも未開拓の領域が多く残されています。このような意味で量子力学の理論と計算手法を駆使できる材料研究者が多く育つことが望まれます。この「夏の学校」は,大学・研究所・企業の若手研究者と大学生を対象とし,今年が第1回目の開校となります。講師と受講者がじっくりと時間をかけて勉強できるようなプログラムが組まれています。 |
<「夏の学校」の流れ> |
初日と二日目は,量子力学の理論について講義を受けました。主な講義としては,「古典力学から量子力学への発展」,「原子構造理論を理解するためのシュレディンガー方程式の解法」,「多電子原子の軌道計算のために開発された一電子近似に基づくセルフ・コンシステント・フィールド(SCF)法について」などです。 |
三日目は,「分子軌道法の基礎理論」,「多くの物質の基礎単位であるオキソ酸イオン・金属錯体について」などについて学び,DV−Xα法を用いた実習を行いました。いくつかの物質については実際の計算で電子状態や化学結合などを検討しました。 |
実習中の写真 | ||
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<DV-Xα計算の実習> |
ここでは,簡単な分子(CO分子)を例として,実際の計算の流れと結果について書きたいと思います。 |
まずは,計算環境の構築です。パソコンにあるCドライブにDV-Xαのフォルダを入れます。DV−Xαのフォルダの中にcalcというフォルダがあるので,そこで計算を行っていきます。DV-Xα計算の作業はコマンドプロンプトで行います。そして,図1のようにしてcalcの中にCOのフォルダを作り,copy ..\ex\co\f01 COと入力し,COのフォルダの中に入力ファイルであるF01をexフォルダからコピーします。F01が作成できたら、計算の入力ファイルF05を作成するためにmakef05と入力し,dvscat nと入力すると計算が開始されます。計算はdvscat1回で自動的に10回の分子軌道計算の繰り返しが行われるように設定されています。収束状況はF36で確認できます。初期値と終値が一致すれば,収束したといえます。出力データはF08に書き出されますが,分子軌道エネルギーはF08eに出力されます。(図2) |
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次は,分子軌道エネルギーのレベル構造を図にします。これには,プログラム”lvlshm”を用います。プロットするエネルギーの下限と上限を決める際には,先ほどのF08eを参考にします。(図3)最後に,波動関数や電子密度のプロットには,プログラム”contr”と”cmap”を用います。ここでは1番から10番までの軌道(CO分子の全軌道)をプロットするように指定されています。エネルギーの低い順に番号をつけ,ファイル名はW1,W2,..............,W10とされます。電子密度のファイル名はchgです。(図4) |
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DV-Xα法には,他にもイオンと共有結合性の評価に使用できるプログラムであるnetc,bndodrやエネルギー図を状態密度図で表すことのできるプログラムであるdosなど,いろいろな情報を引き出すことが可能です。 |
<感想> | ||
今回のDV-Xα研究協会「夏の学校」を終えて,量子力学について基礎から実際の計算まで幅広く学ぶことができ,量子力学について興味がもてました。今後卒業研究において,DV−Xα法を使うので良い経験となりました。また,夜にはお酒を交えて講師の先生方や先輩たちと話す機会などもあり,とても刺激になりました。 | ||
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