空気静圧スピンドル、使用上の注意


 空気静圧スピンドルは超精密加工用の機械要素から出発したことや、初期の段階では周辺機器の不備、技術的な欠陥、取扱いの不慣れなどから、その取扱いには細心の注意が必要とされてきた。だが、空気が供給されている状態では20μm前後の空気層を保って浮上しており、次に述べる使用上の注意を遵守すれば想像以上にタフであり、高精度を半永久的に維持することができる。

供給空気

 空気静圧スピンドルの故障の原因は、操作ミスによる衝突を除いては大半が供給空気からの水、油、ゴミの混入であり、これらは乾燥した清浄な空気を供給することによって防止できる。

 コンプレッサは圧縮機に潤滑油を使用しないオイルフリー形と呼ばれる装置が最適であるが、少容量(1m3/min以下)のものがなく、また高価である。次善の選択として右の図に示すように圧縮機に潤滑油は使用するものの、油分を除去できるクリーンエア形を使用し、管路にミストセパレータ、ダストフィルタを完備して対応できる。

 これらの定期的な保守は重要である。

 水分はドライヤで簡単に除去できるが、一般的に使用されている冷凍式のドライヤはコンプレッサ始動の5〜10分前から運転し、除湿ができるようになったのちにコンプレッサをさどうさせなければならない。また、コンプレッサにドライヤが組込まれている装置では、コック、電磁弁を設け、管路を閉じ、ドライヤが機能するまではスピンドルに圧縮空気を供給してはならない。

 コンプレッサ、ドライヤ、サージタンク、フィルタなど管路の組立をおこなった場合、管路のゴミ、水分、油分を除去するため数分間エアブローをし、これらが除去されたことを確認して、空気静圧スピンドルに接続する。

搬入時の注意

 空気を供給し、主軸を手で軽く回して異常のないことを確認した後、テスターで主軸とハウジングの間に導通のないことを確認する。

 始動時にも必ず同様の確認をおこなう。

 導通はゴミ、水分によって発生し、程度によっては分解清掃が必要となる。

運転上の注意

 アンバランスによる振動が発生することがあり、振動を確認しながら低速回転から徐々に回転を上げて行く。振動が大きい場合はアンバランス量を修正する。

 静かに回転するので『運転中』の表示を設け、危険を防止する。

 また、切削力がスピンドルの許容負荷容量を越えないような切削条件を選択し、駆動モータのオーバロードに注意する。

空気を止める時の注意

 作業が終了して空気を止める時、主軸の外周、ハウジング前端の切削液などを拭き取る。濡れたままで空気を止めると、軸受スキマに液体が侵入し、凝固して回転できなくなる。

空気を使用していない時の注意

 空気を使用していない時に工具の取付けなどで主軸に力をかけてはならない。工具の着脱などの作業は空気を供給した状態でおこなう。

 空気を供給していないことを明示するため、主軸とハウジングをガムテープで固定するとよい。

インターロック

 供給空気の圧力、冷却水の供給、モータの過負荷、フィルタの目詰まりにたいし、始動のインターロックを設ける。