- 融液晶析における結晶純度 (References: 1, 2, 3, )
融液などが固化または結晶化するとき、固液界面において溶質の分配、すなわち固液界面での溶液と結晶の濃度が異なる。しかし、融液固化過程は、結晶が成長しているため熱力学的非平衡状態である。この固液界面における溶質分配理論やモデルを開発することは、結晶の純度を予測する上で最も重要であるが、未だ理論的に解明されていない。最近、本研究室において新規の分配理論を提案し、実験により検証された。この理論の普遍性をさらに高め、実際の融液晶析装置の設計技術を開発している。
- 無機塩の結晶成長に及ぼす不純物の影響とMSMPR型晶析装置の開発
KDPやADPなどのリン酸塩は2つの固有成長面(100,101)をもっている。各面の成長速度は水溶液中の不純物成分に大きく影響され、結晶の晶癖を変化させる場合がある。これまでに、(100)面成長速度に対する各種金属イオン(Al,Cr,Fe,Pb)の抑制効果を明らかにしてきた。また、溶液中の金属イオンは結晶中に濃縮される場合があり、アワーグラス結晶が生成することを見出した。さらに、溶液中の不純物としてアゾ染料を用いれば、金属イオンと異なりKDP結晶の(101)面部分に染料が着色し、美しいカラー結晶が生成することを示した。現在、AFMによるKDP結晶表面の観察により、溶液中の不純物の成長ステップへの影響を調べている。このような基礎実験に基づき、結晶粒径分布と結晶純度の関係に焦点を当て、MSMPR(完全混合)型晶析装置の開発を行っている。
- 水溶液からの疎水性物質の結晶化
極端に希薄な水溶液中の有機物には物理化学的に異なる2種類の溶解度が潜在する。これらは液液2相の相互溶解度と結晶の溶解度であり、多くの未開発の操作を生み出すポテンシャルを持っている。これらの溶解度を利用した高度結晶化分離操作の開発、乳化ー結晶化の非平衡現象と操作についての研究を進めている。さらに、ナノサイズ結晶粒子の新しい生成法について検討している。
- 分子シミュレーションによるクラスターと結晶核の同定、電解質溶液、分子性溶液の結晶化挙動
分子シミュレーションにより分子の性質と溶液構造、さらに液体から結晶へ相変化機構の現象の相関性について理論的にも実験的に研究を進めてる。異種分子の溶液構造について把握した後、平衡、非平衡の結晶化現象の観察によりクラスタと結晶核の違いを見出した。その結果、クラスターは液構造も動径分布関数であり,結晶核は結晶構造の動径分布関数であることが分かった。クラスターは溶質分子の凝集体であるが不定形であり,結晶核は環境に応じた定形である。このことについて定量化する方法を開発中である。 また、LJポテンシャルのパラメータや混合則の固液相転挙動への影響、直鎖炭化水素の溶液構造から結晶構造への相変化,多形転移、電解質溶液の結晶化現象の研究も進めている。
- 結晶相表面のナノサイズ構造の観察
AFMにより冷却面上に生成した結晶相の固液界面を観察している。この固液界面構造は溶液構造に由来しており,さらには溶液のアクティビティーによって決定されるであろう。ローカルな固液界面のアクティビティーを導入し,ナノサイズ固液界面構造を再現できる溶質分配モデルを開発し,ひいてはナノサイズレベルで固液界面を制御する結晶化操作が可能になるように検討している。
- 共同研究
クオーツ振動子による新しいセンターの開発(東亜大学(韓国))や電解質溶液物性の測定とモデリング(カーティン工大(豪州)),効率的晶析プロセスの開発を共同で進めている.