生体内部での生化学反応の解明は、生命現象の理解を深める上でとても重要です。Lab-on-a-Chipと呼ばれる集積化マイクロ流体システムは、解明したい生命現象の基本となる生化学反応やマイクロ化学プラント内の化学反応を制御よく実現する可能性を持っています。流体制御機構だけではなく、電気・光計測機構等を実装した複合集積化システムの設計、試作を行い、化学反応ダイナミクスを解明することを目的に日々研究を続けています。得られた知見に基づき、新しい化学反応システムの創製を行って、役に立つ応用技術として世に出していきたいと考えています。最近の研究成果としては、金・銀ナノ粒子を高次ナノ構造化することに成功し、マイクロ流体システムと組み合わせること(図1)によって、非常に迅速かつ超高感度な分子検体の表面増強ラマン・スペクトルを測定することに成功しました。(図2)マイクロ流体システムに高次ナノ構造を任意に作製できることから、環境分析や医療分野での微量検体検出システムとしての応用が期待されています。高次ナノ構造ができる物理機構について、物理・化学的な観点から究明を行い、その機構を定性的に明らかにすることができました。この原理を用いて、新しいナノ・マイクロ構造の創製と応用研究に取り組んでいます。また、磁性体は量子力学的な交換相互作用、形状に由来する静磁相互作用等複数の物理長の異なる相互作用が競合することで、磁性体内部の磁気構造を変化させます。磁性体をナノスケールの複合構造を有する人工構造を付与することで、そのスピン量子状態を操作し、新しい物理現象の発見やその応用研究も行っています。
図1(a)マイクロ流路全体像,
(b)流路断面の模式図と三次元ナノ構造のSEM観察像,
(c)移流集積法概念図.
図2 4-4'-Bipyridine(4bpy)の分子構造とSERSスペクトル結果.