ある物質だけを選択的に分離・濃縮する技術は環境浄化のみならず製造現場においても必要不可欠です。また、試料を分析する際の前処理技術としても必要です。このようなニーズから、特定の化学物質を選択的に集めたり、分離することを目的とした吸着材の開発に取り組んでいます。具体的には、放射性セシウムやストロンチウムを高効率で回収するための吸着材開発の研究を進めています。開発した吸着材の有効性については、福島県南相馬市の放射能汚染土壌を用いた現地実験を繰り返して検証しています。実用化においては安全性、耐久性、経済性など様々な条件をクリアしなければなりませんが、企業とともに実用化に向けて一歩一歩駒を進めています。
また、放射性物質以外にもヒ素やリン、硝酸イオンなどの環境負荷物質を除去するための吸着材開発も進めています。既存の吸着材の高効率化や廃棄物有効利用についても企業の相談に応じたり、委託研究を行っています。
現在研究対象としている吸着材は主にケイ酸塩鉱物です。同じ組成であっても結晶系の違いや微量物質の存在で吸着性や触媒性能が大きく異なるため、今後もユニークな吸着材や触媒の登場が期待できます。このような吸着材の多くは粉体の形状であるため、実用面においてはハンドリング性を高める必要があるため、磁性体化、繊維化、顆粒化などについても取り組んでいます。
吸着材の一つであるトバモライトの結晶構造。
福島県南相馬市での実験風景。