ディジタルホログラフィの利点を生かした応用として、3次元顕微鏡があります。通常の光学顕微鏡で3次元物体を観察する際には、レンズの焦点を機械的に調節する必要があります。このため、微生物など動く物体の観察は制限されます。ホログラフィック顕微鏡では、数値的に焦点を合わせることによって任意の位置における光の振幅分布と位相分布を再生できます。また、通常の顕微鏡では観察できない透明物体も、位相分布を再生することによって定量的に解析できます。ホログラフィック顕微鏡に関する研究は、これまでに数多く報告され、製品化された顕微鏡もすでに存在します。しかし、広く普及するには至っていません。
本研究では、これまでのホログラフィック顕微鏡の問題点を明らかにし、問題点を解決するための方法を提案しています。また、開発したレンズレス顕微鏡を進展させて、3次元の超高感度顕微鏡や断層顕微鏡および超高分解能顕微鏡の研究を進めています。
ホログラフィック顕微鏡研究の今後の展開として、レンズレス顕微鏡の実用化や生体計測・医療診断への応用の他に、近接場を利用したナノメータレンジの超高分解能化の達成や誘導ラマン散乱を利用した生体組織の計測、生体組織内部の超高感度断層撮影等の新たな展開が考えられる。これらの新しい分野の研究も、今後のテーマとして取り組む予定です。
水中を素早く移動するゾウリムシの位相差画像
タマネギ鱗葉の3次元断層画像