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教員詳細

森下 政夫 [もりした まさお]
教授|工学博士
森下 政夫

研究テーマ:熱力学諸量の測定と物質・プロセス設計への応用

(A) 熱力学諸量の測定とその結果に基づく状態図の熱力学計算
 1970年頃から研究室にて実測の熱力学諸量に基づき,実験困難な高温領域まで熱力学関数表現して相平衡計算し,合金状態図を作成しました.図1に示したNi-Mo-B3成分系状態図は,前任の橋本先生,大森先生,香山先生,私へと,30年を要して作成しました.現在,2030年代の自動車の脱炭素化に向け,EVやFCV用のNd2Fe14Bなど,希土類磁石化合物の熱力学諸量を測定しています.
(B) 固相と水溶液中イオンの新統合熱力学の開拓
 固相からイオンに至る熱力学諸量は,地圏から水圏への物質移動の指標であり,地球環境と経済活動の評価に活用できます.経済協力開発機構(OECD)パリ本部は,地球環境シミュレ-ションデータバンクプロジェクトを推進しています.当研究室はこのプロジェクトに参画し,固相と水溶液中イオンの熱力学諸量を絶対零度付近から高温まで決定しています.
(C) 白金代替ナノ・メゾ構造制御タングステン炭化物の作製
 タングステン炭化物(WC)は白金(Pt)と電子配置が似ていますが,単独のWCは触媒活性を有していません.Ptは高い磁化率をもちますが,WCは非磁性です.そこで,WC格子中に強磁性コバルト(Co)ナノ結晶をドープして内部磁場を付与すると,Pt同等の水素生成触媒活性をもつことを発見しました(図2).この成果は,水素エネルギー技術への応用が期待され,毎日新聞神戸新聞インターネットニュースで報道されています.

  • 図1 Ni-Mo-B 3成分系状態図

    図1 Ni-Mo-B 3成分系状態図

  • 図2 アンモニア化合物水溶液からの水素生成量の経時変化

    図2 アンモニア化合物水溶液からの水素生成量の経時変化