金属酸化物とは金属と酸素の化合物の総称で一般的には電気を通さない絶縁物として知られています。身近な例では、最新のスマートフォンやパソコンの心臓部となるLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)の中では酸化ハフニウムという金属酸化物がトランジスタの材料の一部として使われています。
最近では、この金属酸化物が絶縁物という性質のみではなく、導電性(電気を流す性質)を示したり、電気抵抗が変化したり、電子などの電気を帯びたものを蓄えたりと興味深い性質を持つことが分かってきました。このように多様な機能を有することから機能性金属酸化物とも呼ばれています。
一方で、半導体集積回路技術の進歩は目覚ましく、その恩恵を受けて我々の日常生活はますます便利になっています。しかしながら、半導体技術は寸法を小さくして高性能化する、いわゆる微細化によって進歩してきましたが、もはや微細化のみでは性能を向上できなくなってきています。性能向上を阻害する大きな要因の一つに半導体が消費する電力が大きくなってしまうことが指摘されており、今後のエレクトロニクスの発展のためには、如何に消費電力を低減していくかが大きな鍵となります。
本研究テーマでは、上記のような背景から機能性金属酸化物の持つ特異な性質と半導体技術を組み合わせた新しい超低消費電力の電子デバイスの実現を目指しています。具体的には、金属酸化物材料が電気を帯びる性質(電荷蓄積)を利用した創エネルギーデバイスや情報保持に電力を消費しない不揮発性メモリなどで、これらの実現に必要となる電荷蓄積状態の理解や制御に関する研究を進めています。
金属酸化物薄膜の多様な機能とデバイス応用
金属酸化物薄膜の形成と評価