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当研究室について

川月研究室では、“光”・“高分子” ・“液晶” ・“刺激応答” をキーワードに、光、熱、温度など様々な外部刺激に対して分子レベルで応答し、材料の自己組織性や電子状態を自在に制御できる刺激応答性機能性材料の研究に取り組んでいます とくにディスプレイや電子材料、エネルギー、センサーなどへの応用展開をめざしており、これまでにいくつかの材料が光機能性高分子として実用化されています。
大きな研究分野として:
1. 光応答性高分子の光配向
2. 刺激応答機能性色素/高分子
を研究テーマの中心にしています。
これらを通して高分子フィルムの、配向性の制御や外部応答による機能発現や応答などを創出します。

 大学の研究室として、“明るく、楽しく、ときに厳しく” をモットーに研究をエンジョイしています。

光反応性高分子液晶

ケイ皮酸、フェニルベンゾエート,N-ベンジリデンアニリンなど光反応性メソゲンを有する高分子液晶フィルムを偏光で選択的に光反応すると、 フィルムにわずかな異方性が付与されます(command in bulk)。これをきっかけにして液晶の自己組織化を促すとフィルムには大きな光学的異方性が発現し、 複屈折フィルムや偏光光学素子、光記録、液晶光配向膜等に応用することができます。
  当研究室では、様々な光反応性高分子をデザイン・合成し、それらの光化学応答性、光配向性や光学的挙動を精査するとともに、 新しい手法による光配向技術の学理や、デバイス創成に取り組んでいます。 光配向性高分子液晶の基本構造を示します。このような構造を基本に、メソゲンコアに光応答性基を直接組み入れたり、 水素結合を利用してメソゲンを形成します。  当研究室の光配向材料の特徴は“光分子配向”することです。 これにより光配向後の大きな誘起複屈折、低分子液晶との大きな相互作用が得られます 

N-ベンジリデンアニリンを用いた光配向制御

N-ベンジリデンアニリン(NBA)は芳香族アルデヒドと芳香族アミンの縮合反応により容易に合成される, 液晶材料として古くから知られた材料です。 NBAはアゾベンゼンと類似した光異性化反応を示すことから,光配向材料としての応用が期待できます。
一方で,イミン基 (NBA) は酸条件下の溶液中で加水分解します。そのため,NBAと酸を側鎖に有する共重合体では,配向だけではなく,分解が誘起でき, 光に不活性な配向膜の形成が期待できる。そこで,NBAと酸からなる共重合体において,配向後に加熱することでNBAの分解と低分子フェニルアミンの除去が誘起され, 光不活性な配向フィルムを効率的に生成できることがわかりました。またインクジェットを用いて微細な配向パターンが作製でき、 配向の書き換えやマルチ複屈折パターン化にも成功しました。 さらに、低分子アミンの構造を工夫することで配向膜の組成を組み替え,耐熱性や複屈折を調節できることも明らかにしました。

光運動材料

液晶高分子は配向方向や配向秩序度の低下に伴って様々な機械的熱的物性も変化します。特に架橋した液晶高分子 では液晶の分子配向と高分子骨格の相互作用が強化され,配向秩序度の変化に伴って巨視的な形状変化も誘起できることが知られています。 この原理に基づき,これまでに我々はアゾベンゼンやアントラセンを導入した液晶において巨視的な形状変化を誘起できることも報告してきました。 最近,我々はN-ベンジリデンアニリンを含有する架橋フィルムにおいて,紫外光照射によって光源方向に屈曲し, 紫外光照射を止めると自発的に初期の構造に復元することを見出したことに続き,フィルム内のNBAを一軸配向させることで, より大きな光変形を示すとともに,配向方向に応じた変形を誘起できることを明らかにしました。変形量を大きくしたフィルムでは, リング状に成形することにより光照射によって回転する様子が観察され,形状変化以上の外部的な出力が可能であることを明らかにしました。

磨砕応答色素

磨砕や摺動などの機械的な外力によって発色や発光色が変化する磨砕応答色素は,分子レベルの相互作用により発色が変化するため, 特別な加工技術を必要とせずとも多様なサイズ・形状において力の発生の検知が可能であり,センサーなどへの応用が期待されています。 これらの色素は刺激を受けた位置や分布を記録・表示する用途を考慮すれば,加工性と柔軟性に優れた高分子として利用できることが望ましく, 多様な成膜方法が検討されてきました。我々は,ポリビニルアルコールフィルム内に色素を結晶状態で固定することにより、 局所的な磨砕による発光のパターニングや、結晶状態の変化を評価できることに加え,これらの色素と酸と複合化させることでコントラストが向上することを報告しました。 また,この色素の誘導体において,複合化する添加剤を変更することによるマルチカラー化や波長シフト方向の制御などについても報告してます。 さらに,棒状液晶化合物において磨砕応答を安定に誘起できることから,液晶の配向を利用した磨砕応答色素の機能かも検討しました。 液晶は応力によって分子配向する性質も有するため,機械的刺激による分子配向を発光色変化に導入でき,方位選択的な負荷検知が期待できます。

光剥離接着剤

N-ベンジリデンアニリンを用いて,2枚のガラス基板を貼り合わせ 紫外光を照射すると数10秒で剥離可能なレベルまで接着性が低下することがわかりました。 N-ベンジリデンアニリンを用いることでUV-LEDを光源に利用でき,可視光域でほぼ透明です。 これまでは繰り返し耐久性に課題がありましたが,組成を工夫することでこれを克服しました。 また,光照射に対する応答時間の制御や加工性の向上についても検討しています。 近年接着剤は従来の接着力に加え、必要に応じて外部から刺激を与えることにより接着特性を変化できる機能性が注目されており, 本材料は光で剥離できる接着剤に応用できると考えています