ある日の材料強度学講座.文献を読んでいた大学院生Yくんが突然叫び出す.

Y: 「なんやこれ.わからへん.なんで硬さに単位(MPa)が書かれてんねん.」

そこへ工作センターへ出掛けていたS先輩が帰ってくる.Yくんはなおも叫び続けている.

Y: 「なんでやねん.どないなってんねん.ちょっと,S先輩,これ教えて.」

S: 「どれどれ.あぁ,硬さの単位のことかい.硬さは元々,試料に加えた荷重を試料にできたくぼみの面積で割った値をいうのは知っているよね.」

Y: 「あぁ,知っとるがな.深浦先生の講義で習ったでぇ.」

S: 「であれば話は早いよ.荷重を表面積で割ったら単位はどうなるかな?」

Y: 「そりゃ,応力と一緒でMPa, N/mm2, kgf/mm2などになりますねぇ.」

S: 「その通りだね.硬さは応力の次元を持っているんだけど,通常は単位をつけずに無次元値としてビッカース硬さであればHVと記号で表しているよね.最近では,単位はSI単位系で示されるのが一般的になってきていてね,それはこの硬さ試験についても同様なのサ.応力をSI単位系で表す場合Paになるから,硬さの値についてはこの文献に書かれているようにMPaとなるんじゃないかな.やっぱり,無次元値で書かれることが多いと思うけど,こういう場合もあり得ることを頭の隅にでも覚えておくといいかもよ.」

Y: 「ほぉ〜,なるほど.よ〜くわかったでぇ.S先輩,ほんまにどうもありがとう.ところでS先輩,話は変わるんやけども,昨日どのくらい寝たん?」

S: 「ん〜,12時間.」

Y: 「さすがや.」

  〜この物語は,限りなくノンフィクションに近いフィクションです...