いつもの材料強度学研究グループ.4年生のSくんが院生のMくんに質問してきた.

S: 「あんなぁ,今日のゼミで言っていた塑性不安定条件っていうことがわからへんかったんやけど.」

M: 「あぁ,…確かにあったな.実はオレもよくはわかってないねんけど,ちょっと頑張って説明してみるわ.」

S: 「おっ,さすがや.よろしくお願いします(実は二人は元々同期).」

M: 「まず,引張試験や圧縮試験でな,応力−ひずみ曲線が求まるんやけど,応力とひずみには公称応力(Nominal stress)公称ひずみ(Nominal strain)って言うのと,真応力(True stress)真ひずみ(True strain)の大きく分けて2種類あるのって覚えてるよなぁ?」

S: 「あぁ,あぁ.講義でやったのをバッチリ覚えてるでぇ.」

M: 「おっし.材料が変形すると,弾性変形から始まって塑性変形するようになる.変形が進むと材料は加工硬化して変形抵抗(=変形応力)が大きくなる….

S: 「もう一度整理させてもらうと,材料を変形させていったときには,弾性変形弾塑性変形と変形領域が変化する,ということやな?」

M: 「そうそう,さらに言うと弾塑性変形領域の次は塑性不安定領域,引張試験で言えば試験片がくびれてからの変形領域,があるんや.この塑性不安定領域の始まる条件を"塑性不安定条件(Plastic Instability)"と言うんやで.」

S: 「なるほど.3つの変形領域があって,その3番目の塑性不安定領域に到達する時の条件が塑性不安定条件,というわけか.もしかして,これはよく教科書で出てくる"ネッキング(Necking)"と同じ意味と考えていいんだよね?」

M: 「そうそう.その通りだよ.なんだ,オレよりいっぱい知っとるやん.」

S: 「M君にはかないませんよぉ.ところで,その塑性不安定条件というのはどういう条件なん?何か式でもあったりするの?」

M: 「おっ,そうや,今聞いてくれたところも大事なんや.さっき話した応力とひずみの中で,真応力(s)と真ひずみ(e)があると話したよなぁ.この真応力-真ひずみ曲線で考えると,ある真ひずみにおける曲線の傾き加工硬化率(Work-hardening rate)といって,ds/deで表される.この加工硬化率は,通常真ひずみの増加とともに低下していくんや.真応力-真ひずみ曲線と加工硬化率-真ひずみ曲線のふたつを同じグラフ上にプロットすると,ある真ひずみのところで真応力と加工硬化率が一致する点がある.つまり,s=ds/deっちゅうことやな.

S: 「この条件式で示される関係が,塑性不安定条件っていうことなんか.フムフム,おぼろげながらにわかったような気がするけど,もう一回頭の中を整理しないとダメそうだなぁ.」

M: 「その方が良さそうやな.オレももう一回整理しておくで.これからまた実験で引張試験をすると思うから,お互いそれまでによく理解しとこうや.まぁ,またわからんことがあったら,何でも聞いてくれ.おっと,オレはこれから研磨をせなあかん.

S: 「それならオレはミリングの洗浄に行ってくるわ.お互い頑張って,またおいしいうどん食べに行こうや.」

M: 「おぉ〜お.ボクはうどんには目がないの!!」

 ※M君はうどんにはうるさい人です.