はじめに

 従来の制御圧延・制御冷却により達成される結晶粒微細化は5 mmが限界と言われてきた.しかし,最近さらなる結晶粒微細化法を構造用鋼に利用する研究が行われ,低炭素鋼の超微細化やそれに伴う機械的特性の向上などが報告されている.

  本研究では,変形応力におよぼす温度,ひずみ速度,粒径の影響について議論するために,同じ化学組成の材料を用いてフェライト粒径の異なるフェライト-パーライト鋼を作製し,温度やひずみ速度を変えて静的引張試験を行った.これらの結果より,温度,ひずみ速度,粒径による応力-ひずみ曲線や引張特性の変化について検討を行っている.

 ここでは,得られた静的引張試験結果を簡単に整理し,図とコメントを載せてみました.

 実験方法

 本検討で用いた材料は,JIS-SM490相当鋼(0.15C-0.4Si-1.5Mn-0.014P-0.004S(mass%))である.この材料に加工熱処理を施すことにより,以下に示す3種類のフェライト-パーライト(FP)鋼を得た.

静的引張試験は,ギア駆動式引張試験機を用いて,試験温度296, 243, 210, 77 K4種類の温度で,ひずみ速度3.3×10-6, 10-4, 10-2 /s3種類で行った.本実験で用いた丸棒試験片と伸び計を,以下に示す.
 実験結果

1. 応力-ひずみ曲線と引張特性

公称応力-公称ひずみ曲線(ひずみ速度=3.3×10-4/s)
  • 変形応力は,フェライト粒径が小さくなるほど,また,試験温度が低下するほど増大した.
  • フェライト粒径46.2 mm材は,77 Kにおいて脆性破壊であった.

引張特性 (引張強さ,均一伸び,全伸び)
  • 各温度における均一伸び,全伸びは,ともに結晶粒微細化により減少した.
2. 変形応力におよぼす粒径依存性
フェライト粒径に対する10%, 15% flow stress
  • 10% flow stress, 15% flow stressともに,フェライト粒径との間にホール・ペッチの関係が成立している.

  • この時,ホール・ペッチの式における傾きkはひずみと温度によらず等しいと判断することができる.
3. 変形応力におよぼす温度・ひずみ速度依存性
試験温度に対する10% flow stress
  • 右図は,変形応力から各粒径296 Kにおける応力を引いた結果を温度に対してプロットしたもの.
  • これら2つ結果より,変形応力の温度依存性は粒径によらず等しいと判断することができる.
ひずみ速度に対する210 Kの10% flow stress
  • ひずみ速度に対する変形応力の変化の傾きは,フェライト粒径によらず等しい.

  • このことより,変形応力のひずみ速度依存性は等しいと考えられる.

 まとめ
以上の結果を整理した結果,以下のようにまとめられる.
 今後の課題
  • 超微細FP鋼の高速変形 など
内容・結果等に関するお問い合わせは,土田紀之(tsuchida@eng.u-hyogo.ac.jp)までお願いいたします.