主な研究内容

(A)熱力学諸量の測定に関する基礎的な研究

物質の熱力学諸量,特に標準生成ギブズエネルギーを決定することは,熱力学データベースを構築するという意味で重要です.また,融点が非常に高い材料や,蒸気圧が高い成分(例えばマグネシウムやアルミニウム)を含有する材料のように,実験によって状態図を作成することが困難な系では,熱力学諸量を用いることで計算により状態図を作成することが可能になります.さらに,熱力学諸量は,相の変化や安定性,反応経路を平衡論的に考察し,材料製造プロセスやスクラップからの有価金属のリサイクルプロセスを構築する上でも非常に重要な物性値です.標準生成ギブズエネルギーを決定する方法はいくつかありますが,当研究室では,主に"熱量計法"と"起電力法"を用いて測定を行っています.過去には得られたデータを基に計算状態図や,化学平衡図を作成してきました.ここでは,熱力学諸量の測定に関する基礎的な研究について紹介します.


(1)熱量計法による熱力学諸量の測定

熱量計法による標準生成ギブズエネルギー(ΔfGo)の決定は,次の二つの測定から得られるデータを用いて行います.一つは,室温において,物質が塩酸などに溶解する際に生じる溶解熱を"溶解熱測定装置"を用いて測定します.これにより室温における物質の標準生成エンタルピー(ΔfHo)を決定することができます.二つ目は,物質の熱容量(Cp)で,絶対零度付近から室温付近までは"極低温熱容量測定装置"を,室温以上の高温においては"熱流束安定型DSC装置を用いて測定します.この熱容量から任意の温度の標準生成エントロピー(ΔfSo)や標準生成エンタルピーが決定できます.従って,標準生成ギブズエネルギーは,標準生成エンタルピーと標準生成エントロピーから算出(ΔfGo = ΔfHo - TΔfSo)できます.この方法により,Mg-Zn系,Al-Nd系,Mg-La系などの種々の中間化合物の熱力学諸量を測定し,後世に残るデータを発表してきました.

一方,物質が構造的な相転移や磁気相転移,超伝導相転移を起こすような場合には,一般的にその温度において熱容量にλ型のピーク(ギリシャ文字のλに形が似ていることから)が観察されます.絶対零度付近から高温まで熱容量を連続して測定することには,それまで発見されていなかった相転移を発見できる可能性が秘められていると考えます.一例としてAl-Nd系の中間化合物であるAlNd3の熱容量,Cp,の測定結果を図1に示します.これまで知られていなかった,強磁性—常磁性相転移を74K付近に発見することができました.強磁性—常磁性相転移温度のことを一般にキュリー点と呼びます.その他,Cp測定により,新たな超伝導や構造相転移などを発見することが可能です.

図2に,AlNd3のキュリー点前後における,強磁性相(丸印)と常磁性相(三角印)の標準生成ギブズエネルギ-,ΔfGom,T ,の測定結果を示します.また,ΔfGom,Tの近似関数を,強磁性相は実線で,常磁性相は破線にて示しました.キュリー点以下では,強磁性相のΔfGom,T(実線)は,常磁性相のΔfGom,T(破線)よりも小さく,強磁性相が安定であることが分かりました.逆に,キュリー点以上では,常磁性相(破線)のΔfGom,Tは,強磁性相のΔfGom,T(実線)よりも小さく,常磁性相が安定であることが分かりました.この強磁性相(実線)と常磁性相(破線)のΔfGom,Tの交点が,真のキュリー点であり,その温度は73.47 Kであることが分かりました.また,その前後の強磁性相と常磁性相のΔfGom,Tの差が,磁気相転移の駆動力を与えています.超伝導技術を発展させるためには,液体ヘリウムや液体窒素などの冷媒の製造技術を相補させる必要があります.冷媒の冷却技術として磁気冷凍技術が注目されています.本成果で得られた強磁性相と常磁性相のΔfGom,Tを磁気冷凍作業物質の材料設計に活用することを検討しています.

その他,当研究室では経済協力開発機構(OECD)パリ本部と連携して熱力学諸量のデ-タベースを構築しています.原子力発電使用済核燃料管理のための熱力学諸量デ-タベースを構築し,OECD地球化学シミュレ-ション電算機データバンクに集積しています.

図1 AlNd3の熱容量

図1 Al-Nd2成分系中間化合物AlNd3の熱容量, Cp,の測定結果.
(J. Physical Chemistry, C, Vol.116,(2012), pp.20489-20495.)

図2 AlNd3の標準生成ギブズエネルギ-測定結果

図2 Al-Nd2成分系中間化合物AlNd3の強磁性相(丸印)と常磁性相(三角印)の標準生成ギブズエネルギ-,ΔfGom,T,の測定結果.ΔfGom,Tの近似関数を,強磁性相は実線で,常磁性相は破線で示した.
(J. Physical Chemistry, C, Vol.116,(2012), pp.20489-20495.)


(2)起電力法による標準生成ギブズエネルギーの測定

起電力法は,酸素イオン伝導体である固体電解質を用いて酸素濃淡電池を作製し,その起電力を測定することで標準生成ギブズエネルギーを決定する方法です.図3に,起電力法の測定原理を示します.固体電解質は,ジルコニア(ZrO2)にイットリア(Y2O3)やカルシア(CaO)を添加したものを用います.この固体電解質を介して,片方を測定したい物質を含んだ一定の平衡酸素分圧をもつ電池試料とし,もう片方を例えば空気のように既知の酸素分圧をもったものとします.大抵の場合は,酸素分圧が低い電池試料側がアノード,酸素分圧が高い空気側がカソードとなる酸素濃淡電池が形成されます.固体電解質内の電気伝導が酸素イオンのみになるような条件において,この酸素濃淡電池の酸素分圧の比に起因した起電力を測定すると,電池反応の反応ギブズエネルギーが決定でき,続いて,測定物質の標準生成ギブズエネルギーを算出することができます.起電力法は,測定したい物質を含んだ平衡関係を把握しておく必要がありますが,精度良い値が得られることが特徴です.

本研究室でのこの研究の歴史は長く,主に金属ホウ化物を中心に様々な物質の標準生成ギブズエネルギーを決定・発表してきました.ほんの一例ですが,図4に過去に測定したNi-B-O系の原子1モル辺りの標準生成ギブズエネルギー(混合のギブズエネルギー)を示します.この一部のデータを用いて,Ni-Mo-B系やNi-W-B系の計算状態図やNi-B-O系の化学平衡図を作成してきました.

図3 起電力法測定原理

図3 起電力法原理.

図4 Ni-B-O系結果

図4 Ni-B-O系起電力測定結果とギブズエネルギー.

(B)非水溶媒を用いる機能材料の電解生成

当研究室では上記の熱力学諸量の測定のように化学熱力学に関連する基礎的な研究の他に,物質創製(製錬)に関する研究も行っています.特にアルミニウムやマグネシウムといった卑金属の電解製錬には欠かせない溶融塩電解について研究を行ってきました.このような金属は非常に活性であり,水溶液からの電解では水素発生が生じるだけで金属への還元は不可能です.電解により活性な金属を得るには,溶融塩を含めた非水溶液を電解浴に用いる必要があります.溶融塩電解は,文字通り"溶融"した金属"塩"のことであり,無機系の金属塩を用いる場合,数百℃~千℃のイオン性の融体となります.この高温の溶融塩の電解により,過去にマグネシウムやタングステン,モリブデンなどの電析について研究を行ってきました.しかし,高温であるため,扱いが不便であるという欠点があります.本研究では,塩化アルミニウムなどを用いて100~200℃の温度で溶融塩電解を行う研究を行っています.また,近年では,1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミド(EMIB)といった有機イオン液体を用いることで,室温~100程度の温度で溶融塩電解を行うことが可能となり,亜鉛や高耐食性を示す亜鉛-マグネシウム合金の電析について研究を行ってきました.ところが,有機イオン液体は非常に高価であるため大量生産には不向きと考えられます.このEMIBを用いる電析実験の過程で,電流効率や表面性状の向上のためエチレングリコール(EG)を添加剤代わりに用いていたのですが,単体のEGに比較的多くの金属塩が溶解し,金属の電析が可能であることが確認できました.そこで,現在ではこの安価なEGを非水溶液電解の溶媒に用い,機能性材料の電解生成に関する研究を行っています.


(1)エチレングリコールを用いた電析法による熱電薄膜の作製

熱電変換材料は材料内の温度差を直接電気エネルギーへと変換することが可能です.主に半導体であり化合物・合金系,酸化物系など様々な材料が発見・開発されています.工場や車から排出される熱エネルギーは無駄に排気されるだけでしたが,熱電変換材料を用いることでエネルギーの有効利用が期待されています.通常の熱電変換デバイスは,p型材料とn型材料を交互に接続して構成されています.従って,薄膜の熱電変換材料を積層すれば省スペース・高容量のデバイスが実現可能です.バルク材や薄膜材料とし熱電材料の作製法についても多くの方法が試みられていますが,本研究室では,膜状の熱電材料を作製する方法として安価で装置が簡単な電析法に着目しました.

電析法による熱電材料の作製対象としては,高い熱電性能指数を有するZn-Sb系のp型材料Zn4Sb3や,第三元素の添加によりp型からn型へと変化することが知られているCo-Sb系の材料に着目しています.亜鉛,コバルト,アンチモンはいづれも水溶液からでも析出させることが可能な金属です.しかし,特に亜鉛は水素発生と競合し,電析膜中にに水素が混入し,脆化や表面性状,電流効率を低下させる可能性があります.Zn4Sb3は金属間化合物であり,ただでさえ脆い材料であるため,水溶液中からの電析ではなく,非水溶液電解を選択しています.前述したように,エチレングリコール(EG)を電析媒体とし,Zn-Sb系やCo-Sb系合金の電解生成を研究しています.一例として,Zn-Sb合金電析の結果を図1に示します.EG中の塩化亜鉛と酒石酸アンチモンアリウムの濃度比と電流密度によって,得られるZn-Sb電析物の組成が制御でき,熱電性能が高いZn4Sb3(Zn含有率で57.1 mol%)に近い組成の電析物を得ることができました.また,その電析物に温度差を与えると起電力が生じることが分かりました.

図1 EGからのZn-Sb電析

図1 EG溶液からのZn-Sb合金電析.


(2)溶融塩電解を用いたFe-Al系熱電薄膜の作製

溶融塩電解というと1000℃近い高温の融体を用いるイメージがありますが,この研究では,150℃前後の溶融塩を電解に用いています.AlCl3-NaCl-KCl三成分系には,100℃以下で溶融する組成があり,その近傍の64.0 mol%AlCl3-26.0 mol%NaCl-10.0 mol%KCl を基本組成として用いています.この溶融塩に鉄イオン源としてFeCl2 を添加した,AlCl3-NaCl-KCl-FeCl2四成分系溶融塩を用いて,熱電変換材料であるFe-Al合金を電解作製する研究を行っています.AlCl3とFeCl2のモル比を100:1とした63.59 mol%AlCl3-25.83 mol%NaCl-9.94 mol%KCl-0.64 mol%FeCl2四成分系溶融塩を調製し,50~250 Am-2の電流密度で定電流電解したところ,0.40 mol%~7.20 mol%のAlを含有するFe-Al合金が得られることが分かりました。X線回折分析の結果,これらの合金は,AlがFe格子中 に固溶したFe-Al 合金であることが分かりました。次に,AlCl3とFeCl2 のモル比を変えたAlCl3-NaCl-KCl-FeCl2四成分系溶融塩を調製し,電解を行ったところ,FeCl2 濃度が0.5 mol% 以下の溶融塩では電析物中のAl含有量が著しく増加し,様々な組成のFe-Al 合金が得られることが分かりました。本研究の範囲内では,Alが約1 mol%~75mol%含有したFe-Al合金が得られました.

本研究で作製したFe-Al 合金膜に,温度差を与えると起電力が生じ,その起電力の符号(ゼーベック係数の符号)は合金組成によって変化することが確認できました。


(3)エチレングリコール溶液からの高耐食性Zn-Mg合金めっき

亜鉛めっきおよび亜鉛合金めっきは安価で防錆効果の高い表面処理で,特に自動車用外装材や建材などに使用される鋼板などに広く利用されています.その中でマグネシウムを含有したZnめっきの耐食性はZn単独めっきの約5~20倍であり,極めて高い耐食性を有することがわかってきました.このZn-Mg合金めっきを工業的に大量生産が可能な電気めっきにより得るには,電気化学的に卑なMgを共析させるため水素発生のない非水溶液系の溶媒(例えば溶融塩)を用いる必要があり,さらに自動車用鋼板上にZn-Mg合金めっきを施すことを考えると,熱処理工程で得られた鋼板の強度を低下させないよう150℃以下の電解温度で行う必要があります.そのため,当研究室ではイオン液体を用いた低温(室温~150℃)における溶融塩電解により,Zn-Mg合金めっきを作製する研究を行ってきました.その結果,EMIBTMPA-TFSIといった有機イオン液体を電析溶媒とし,エチレングリコールやグリセリンを添加剤とした電解浴から,マグネシウムを2~25 mol%含有した 亜鉛めっきを作製することができました.その耐食性は,Zn単独めっきの場合と比較して約20倍であることも分かりました(図2).

また,安価で非水溶液電解が可能なエチレングリコールを電析媒体として用い,亜鉛-マグネシウム合金めっきを作製することに成功しています.

図2_Zn-Mg合金めっきの耐食性

図2 Zn-Mg合金めっきの耐食性.

(C)希少金属の省資源化および分離回収

(1)超硬合金都市鉱山からのタングステンおよびコバルトの分離・回収

工業材料中最も高い硬さと弾性率を有するタングステン炭化物(WC)を結合相コバルト(Co)で焼結した超硬合金は、切削工具や金型(写真1)として、自動車産業を中心にして大量に使用されています。しかしながら、タングステン資源の90%が特定の産出国に偏在していることに起因して、タングステン原料の価格が乱高下しています。戦略物質として外交カ-ドになり易く、また、投機の対象にもなり、輸入の先行きが不透明となっています。自動車をはじめとする機械産業や電子部品産業に超硬合金を安定供給するためには、我が国に蓄積されている廃棄超硬合金都市鉱山からタングステンとコバルトを分離回収する技術開発が必要です。

当研究室ではこの目的を達成するため、まず、廃棄超硬合金を比較的低温で迅速溶融できる溶融塩浴の開発に取り組みました。その結果、新規硝酸ハロゲン化物溶融塩を開発し、比較的低温の500℃において、超硬合金の迅速溶融を達成しました。この超硬合金成分を含む溶融塩を冷却、凝固塩をろ過することにより、ろ液中にタングステン酸(WO42-)を濃縮することに成功しました。このタングステン酸を化学処理し、元素としてのタングステンを回収することに成功しました(写真2)。なお、ろ過時の残滓は酸化コバルトであり、これを水素熱還元することにより、元素としてコバルトを回収できることも明らかにしました。

現在、実用化を目指し、より低コストプロセスの開発を目指しています。

写真1 WC-Co超硬合金製金型

写真1 WC-Co超硬合金製金型.

写真2 超硬合金都市鉱山から分離・回収した元素タングステン

写真2 超硬合金都市鉱山から分離・回収した元素タングステン.


(2)超硬合金用ナノ・メゾ構造制御タングステン炭化物の作製

工業材料中最も高い硬さと弾性率を有するタングステン炭化物(WC)を結合相コバルト(Co)で焼結した超硬合金は、切削工具や金型として、自動車産業を中心にして大量に使用されています。しかしながら、戦略物質として外交カ-ドになり易く、また、投機の対象にもなり、輸入の先行きが不透明となっています。自動車をはじめとする機械産業や電子部品産業に超硬合金を安定供給するためには、廃棄超硬合金都市鉱山からタングステンとコバルトを分離回収することが求められています。また、分離回収に相補して、タングステンの使用量を削減することが迫られています。

当研究室では超硬合金原料のタングステンの使用量を削減するため、タングステン炭化物の原子配列をナノ・メゾレベルで制御する研究に取り組んでいます。写真3に当研究室が開発したナノ金属コバルトドメイン内包タングステン炭化物を示します。炭化タングステン中にナノレベルでコバルトドメインが分散したこの新規炭化物は、タングステン使用量を削減しつつ高い硬さを維持できることが判明しました。従来のタングステン炭化物の使用量を7%削減できることが明らかとなり、実用化を目指しています。

写真3  ナノ金属コバルトドメイン内包タングステン炭化物の微細構造

写真3 ナノ金属コバルトドメイン内包タングステン炭化物の微細構造: (a) 高分解能透過電子顕微鏡像: (b) フーリエ変換像.
(J. American Ceram. Soc., Vol.95, (2012), pp.3797-3801.)

(D)環境保全

経済協力開発機構(OECD)パリ本部と連携した使用済核燃料管理のための熱力学データベースの構築

原子力発電による使用済核燃料は廃棄できないまま、世界中に蓄積されています。この使用済核燃料は、硝酸水溶液に溶解、蒸発乾固と同時に、ホウ珪酸化物融体を用いてステンレス鋼製容器に注入されて冷却、ガラス固化体に成型されています。このガラス固化体を、ベントナイト、コンクリ-トの人工バリアで包み、地下300 m以下の地層に処分する方法が検討されています。1000年を超えた後、あるいは大地震などにより、人工バリアが崩壊する不測の事態に備える必要があります。ガラス固化体が、直接地下水に接触,接触した放射性物質が地下水に溶出する過程を理解するためには、固相と水溶液中イオンの熱力学データベースを統合して構築することが求められています。

経済協力開発機構(OECD)パリ本部は、この問題に対する熱力学諸量の世界標準値を選定しており、これまで、U(1992&2003)、Am(1995&2003)、Tc(1999&2003)、Np&Pu(2001&2003)、Ni(2005)、Se(2005)、Zr(2005)、Th(2008)、Sn(2012)およびFe(2013)の熱力学データベースを編纂してデータブックを刊行し、現在、Moの熱力学データプロジェクトを推進しています:
http://www.oecd-nea.org/dbtdb/
当研究室は、このMoプロジェクトに参画し、元素モリブデン、二成分系および三成分系酸化物(図1)、炭化物および一部の水溶液中イオンの世界標準値を選定しつつデータブックの刊行に向けて鋭意取り組んでいます。

ニッケルモリブデン酸化物の熱容量

図1 当研究室が測定したニッケルモリブデン酸化物(NiMoO4)の2 Kから1380 Kまでの熱容量.
(J. American Ceram. Soc., Vol.86, (2003), pp.1927-1932.)

(E)触媒開発とその応用

多元系合金からの多孔質触媒開発と水素生成反応への応用

水素は次世代エネルギー源として活用を期待されているが、その爆発性の高さから貯蔵・運搬に関して問題視されている。そこで室温で液体または固体として存在する高水素含有化合物からの水素生成反応が注目されている。アンモニアボラン(NH3BH3)やギ酸(HCOOH)は水素含有率が高く、貯蔵条件下で安定であることから、これら高水素含有化合物からの水素生成反応において高効率に水素を取り出すことのできる触媒の開発を目指している。

触媒前駆体としてアモルファス合金を利用し、その構造が触媒特性に与える影響についても検討を行なっている。アモルファス合金は結晶合金とは異なり、原子の配列が非常に無秩序でありその構造に由来した特異な性質を示す。一般に液体急冷法で調製したアモルファス合金はリボン状であり表面積が極めて小さい。高活性化の手法として、アモルファス合金に化学処理を施し選択的に一成分を抽出させ多孔質触媒を得ている。触媒反応中や昇温過程におけるin situ XAFS測定を駆使し、多孔質金属の電子・構造状態やアモルファス合金の結晶化過程における構造変化を詳細に追跡し、多孔質金属の触媒特性と前駆体原子配列について関連を検討している。

アモルファス合金と結晶合金

図1 アモルファス合金と結晶合金.

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