研究分野と研究テーマ
研究概要
我々の研究グループでは熱力学を化学平衡や化学反応の分野に応用した化学熱力学に関連する研究を行っています。
基礎的な研究として、標準生成ギブズエネルギーを含めた物質の熱力学諸量の測定を行っています。主に次の二つの方法を用いています。一つは298 Kにおける溶解熱測定と極低温から高温に至る物質の熱容量測定を組み合わせる熱量計法です。標準生成エンタルピーと標準生成エントロピーを決定することで、標準ギブズエネルギーを決定しています。もう一つの方法は、固体電解質を用いた起電力法です。固体電解質を用いて酸素濃淡電池を作製し、その起電力を測定することで、目的物質の標準生成ギブズエネルギーを決定します。また、これらの結果に基づいた計算状態図や化学平衡図の作製も行っています。
一方で、化学熱力学を材料設計・研究に用いた応用的研究も行っています。製錬・物質創成に関わる分野の研究として、溶融塩などの非水溶液溶媒を用いた機能性薄膜の電解作製を行っています。溶融塩電解では水溶液から得ることができない金属・合金の電解析出が可能です。これまで高耐食性めっきや熱電変換機能を有する薄膜の作製を試みてきました。また、廃材や都市鉱山からの有価金属の分離・回収に関する研究も行っています。
主な研究
- (A)熱力学的諸量の測定関連【詳細】
- 絶対対零度付近からの熱容量測定と溶解熱カロリメトリーによる物質の標準生成ギブズエネルギーの決定
- 固体電解質を用いる起電力法によるCr-B系の標準生成ギブズエネルギーの決定
- (B)非水溶媒を用いる機能材料の電解生成【詳細】
- (C)SDGs達成に向けた資源循環研究【詳細】
- (D)環境保全【詳細】
- (E)触媒開発とその応用【詳細】
令和2年度の研究テーマ
- 修士論文
- 溶解熱カロリメトリーと極低温からの熱容量測定によるレアア-ス磁石主相SmFe11Tiの熱力学諸量の決定
- 溶解熱カロリメトリーと極低温からの熱容量測定によるレアア-ス磁石主相Dy2Fe14Bの熱力学諸量の決定
- Au-Cu合金を出発原料としたMOF修飾多孔質Au触媒の開発
- KNO3-KF溶融塩浴溶解と溶媒抽出法による超硬合金都市鉱山からのタングステンとコバルトの分離回収
- 卒業論文
- 固体電解質を用いた起電力法によるCr2Bの標準生成ギブズエネルギー決定
- レアア-ス磁石主相Sm(Fe0.9Co0.1)11Tiの極低温から高温までの熱容量測定による磁気モーメントの推算
- ZrMo2O8の熱容量温度曲線におけるヒステリシスループの発見
- エチレングリコールを用いた非水溶液からのZn–Co–Mg3成分系合金電析
- Ce–Alアモルファス合金から調製した多孔質CeO2の煤燃焼反応特性
- Fe–Al合金からの多孔質酸化鉄の調製とそのRu担持触媒の水素生成反応特性
- 超硬合金都市鉱山から回収した再生資源によるコバルトナノ結晶ドープタングステン炭化物の水素生成触媒作用