国際単位系SIで定められた表記法について

国際単位系SIは物理量を表す際の単位(メートルやアンペアなど)を定めるものですが, それだけでなく物理量を扱う際の表記法についてもルールを定めています. 以下ではそれらのルールとそのLateXでの入力方法について説明します. ルールの出典については 「国際文書SI第8版」を参照してください.

単位記号はローマン体

国際単位系SIで定められた表記ルールの内の一つに単位記号にはローマン体(立体)を用いるというものがあります. LaTeXでは数式モードを使うと自動的に書体がイタリック体(斜体)になるため, 単位記号を扱う際には意識してローマン体にする必要があります. 数式モード中でローマン体を使うにはmathrmというコマンドを使用します. 例えば, 速度の単位 \mathrm{m/s} や密度の単位 \mathrm{kg/m^3} は以下のように表します.

$\mathrm{m/s}$, $\mathrm{kg/m^3}$

物理量はイタリック体(添え字はローマン体)

同じくSIでは, 物理量を表す記号はイタリック体(斜体)の単独の活字で表すことが定められています. ただし, 単独の活字(一文字)だけという制限があると, 扱う物理量が増えたときに文字の種類が足りなくなってしまうため, 下付きまたは上付きの添字や括弧内で付随情報を表します. 例えば, C は熱容量に対して推奨される記号とされており, モル熱容量は C_\mathrm{m}, 定圧モル熱容量は C_\mathrm{m,p}, 定積モル熱容量はC_\mathrm{m,V} を使用することが推奨されています. これらの記号はLaTeXで以下ように表されます. 添え字自体は物理量ではないのでローマン体にすることに注意してください.

$C$, $C_\mathrm{m}$, $C_\mathrm{m,p}$, $C_\mathrm{m,V}$

数値と単位記号の間に適切なスペースを入れる

物理量の値は数値(numerical value)と単位(unit)の積として表されます. 数値は常に単位の前に置き, 数値と単位を分割するために空白(space)を用います. この際の空白は乗算記号を表すとされています. LaTeXの数式モードでは通常の空白は無視されるので, 明示的に空白を入れるコマンドを使う必要があります. 例えば, 長さ 10\,\mathrm{m} や重さ 8\,\mathrm{kg} などは以下のように表されます.

$10 \, \mathrm{m}$,  $8 \, \mathrm{kg}$

また, SIをサポートするスタイルファイルである siunitx を使うと, 以下のようにするだけで数値と単位の間に空白を入れたり, 単位記号をローマン体にしてくれるので非常に便利です. 使用するには

\usepackage{siunitx}

をプリアンブルに追加した上で以下のコマンドを使用してください.

$\SI{10}{m}$, $\SI{8}{kg}$

数学記号はローマン体

SIに明記された事項ではありませんが物理量と区別するために, 数学記号はローマン体で表記します. 例えば, 変数 x の時間 t での微分を表す場合, xt はイタリック体で表しますが, 微分作用素 \mathrm{d} はローマン体で表すので, \mathrm{d}x/\mathrm{d}tとなります.

$\mathrm{d}x/\mathrm{d}t$

また, 代表的な数学記号や関数については専用のLaTeXのコマンドが用意されており, これを使うとローマン体で表記されます. 例えば, \sin,\exp, \log, \lim, \minなどは以下のコマンドで出力されます.

$\sin$,$\exp$, $\log$, $\lim$, $\min$

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