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当研究室で所有している大型装置の紹介です

X線回折測定装置
(Bruker D2 Phaser & リガク RINT-2000)


 当研究室では2台のX線回折測定装置を保有しています。写真のD2 Phaserは小型卓上の装置です。 当研究室では各自で合成した試料はまずこの装置で分析を行い、出てきたX線回折パターンから材料の結晶性などを評価します。 特に炭素材料では最重要パラメータである層間距離を評価することができます。 また充電を行った電極中の炭素材料では層間にイオンが挿入されることで層間距離が変化するため、充電時の相関距離変化を調べることは電気化学反応特性の理解に役立ちます。 充電状態の試料は大気中で不安定なので、気密容器を用いて不活性雰囲気下で測定を行います。









元素分析装置
(Thermo Fischer Flash Smart)


 燃焼法と呼ばれる方法で試料を完全に燃焼させたときに発生するガスを分析することで、試料中に存在するC, H, NおよびO原子の重量を精密に算出することが可能です。 当研究室では各自で合成した炭素材料の組成式を決定するために用います。 炭素材料中の含酸素量は材料の性質に大きな影響を与えることから、この装置で求めた酸素量と材料特性の相関を評価します。











パルスレーザー堆積装置


 金属酸化物などの無機固体の表面に非常に高エネルギーのレーザーを照射することで、表面の酸化物を昇華させ、上部に設置した金属基板上に再析出させることで種々の金属酸化物薄膜を合成する装置です。 写真はレーザーを照射して酸化物を昇華させている瞬間の装置内部の写真で、紫に見えるものは蒸気やクラスターイオンやプラズマ状態のマンガン酸化物です。 この装置は無機材料科学研究グループと共同で使用しています。 レーザー強度や堆積時間などを変えることで任意の膜厚をもつ薄膜を合成することができます。 当研究室ではリチウムイオン電池正極材料の薄膜を合成し、モデル電極として正極表面で起こる現象を調べています。











循環型グローブボックス
(美和製作所 MDB-1KP-HGKUSQ-10 & UNICO UN-800L)


 リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池を作る上で、空気中の水分や酸素は大敵です。 なぜならリチウムやナトリウムは酸化されやすく、水分や酸素とすぐに反応してしまうからです。 そのため水分や酸素が非常に少ない環境でこれらの電池を作る必要があります。 写真に示すグローブボックスはガラス窓がついた金属製の大きなボックスにゴム製の大きなグローブがついた装置です。 内部は不活性であるアルゴンガスで満たされており、水分や酸素が殆ど存在しません。 このグローブに手を突っ込んでボックス内部で電池を組み立てることで、各種電気化学測定のための電池を作製します。









電気化学測定装置
(北斗電工 HZ-Pro, HJ1001SD8 & Biologic SP-150e 他多数)


 自分で材料を合成し電極を作って電池を組んだら、この装置を使って電流を流して充放電測定を行います。 定電流充放電測定だけでなく、サイクリックボルタンメトリーや電気化学インピーダンス測定など様々な測定法が可能です。 特に電気化学インピーダンス測定では電池内部に存在する様々な抵抗成分ごとの情報が得られることから、電極反応速度を解析する上で重要な手段となります。 それぞれの測定手法で得られる情報が違うことから目的に合わせて適切な測定法や条件を選択して測定を行います。













PCクラスタ


 実験結果を考察する上では数値計算データが大きな助けになります。 当研究室では密度汎関数法による計算により、材料の電子状態や酸化還元電位、材料中のイオン拡散のポテンシャル障壁などを評価しています。 実験結果を計算結果と突き合わせることで、物理化学的により深い考察が可能になります。
 なお、本装置は市販の科学研究専用に作られたサーバーではなく、一般的なPCパーツを購入して自作したPCをスイッチングハブで並列接続したものであり、同等スペックの科学研究用サーバーの半額ぐらいの値段で作れました。いうなれば小さな自作スーパーコンピューターです。 もちろん「富嶽」のような本物のスパコンと比較すると性能も値段も月とスッポンですが、動作原理としてはほぼ同じです。
 計算を回すと排熱がすごいので、冬場は暖房代わりにもなり一石二鳥です。また市販のLEDイルミネーション付きマザーボードを流用しているので、夜間には沢山のマザーボードの光が煌めいて幻想的です(写真1 & 写真2)。





走査型プローブ顕微鏡
(日立ハイテクサイエンスNanoNaviReal/S-image)


 試料表面の凹凸などを評価するための顕微鏡の一種です。 本装置では原子間力顕微鏡(AFM)と走査トンネル顕微鏡(STM)の両方が測定できます。 AFMはカンチレバーと呼ばれる小さな板の先端に固定された極小の探針と試料の間の原子間力を利用することで試料表面の凹凸を評価します。 STMではカンチレバー先端の探針と試料の間で発生するトンネル電流から凹凸や電子状態を検出します。 STMの空間分解能の方がより高く、一つの原子の凹凸を評価することも可能です。 当研究室では主に合成した酸化黒鉛(酸化グラフェン)の面方向のサイズや積層数を評価するのに使用しています。










走査型電子顕微鏡
(日本電子JSM-6010Plus/LV)


 試料に電子線を照射して反射した電子などを検出することで、光学顕微鏡では見ることができないぐらい小さな領域まで拡大して見ることができる顕微鏡です。 当研究室では様々な用途に利用しており、例えば合成した材料の表面形態の観察や、電気化学測定後の電極の観察などに利用しています。












吸着測定装置
(マイクロトラックベルBelSorp-Max)


 試料を真空で低温にしたガラス管の中に入れ、そこに窒素を少しずつ入れていったときの吸着量と圧力を調べることでその試料が持つ細孔の大きさや量、比表面積などを調べることができる分析装置です。 当研究室で合成している多孔質炭素材料の比表面積や細孔サイズなどを調べるために使用しています。












赤外分光測定装置
(Thermo Fischer Nicolet iS50 FT-IR Analytical)


 試料に赤外領域の光を当て、各波長での吸収または透過度から試料内部に存在する結合などを調べることができる装置です。 当研究室では主に合成した炭素材料に存在する官能基を調べるために使用しています。 また、全反射測定用のアタッチメントもついていることから、平板試料を窓面に押し当てることで表面近傍に存在する官能基を調べることもできます。 これを利用して電極表面に副生成物として形成される被膜成分の同定なども行っています。











示差熱熱重量同時測定装置
(島津製作所 DTG-60)


 試料を加熱して温度変化に伴う重量変化を調べることで、試料中に存在する成分の燃焼・分解・気化温度などを測定できる装置です。また残存重量から試料内部に存在する炭素以外の無機成分の割合なども調べることが可能です。 当研究室ではピラー化炭素のピラーの質量比や、炭素電極内に残存したアルカリ金属イオンの質量比などを求めるために使用しています。 示差熱分析(DTA)測定も可能であり、種々の相転移温度なども調べることが可能です。