第2回 DV-Xα夏の学校2007 参加レポート
 DV-Xα計算実習
ここでは、DV-Xα計算実習の内容を説明します。
普通の分子の計算としてCO分子の計算を行い、分子軌道の波動関数と電子密度を求めました。
また、イオンの計算として硝酸イオン、錯体の計算としてFe(V)シアノ錯体、結晶の計算としてMgO、Fe酸化物を用いて電子密度を求めました。
ここでは例として硝酸イオン(NO3-)のイオン性と共有結合性の評価についての計算を紹介します。     
DV-Xα計算の作業はコマンドプロンプトで行いました。まずディレクトリー¥DVXA に入り、>setdvxa と入力しDV-Xα計算の環境設定を行い、ディレクトリー¥DVXA¥calc に入り、>mkdir NO3-(計算する分子の名称)としてディレクトリー¥NO3-を作りました。計算はディレクトリー¥DVXA¥calc¥NO3- の下で行いました。
このイオンの構造は平面三角形でD3hの対称性をもつので対称軌道データ(f25ファイル)を用いて計算します。
イオンの三次元座標を記したf01の内容を図1に示めします。DV-Xα計算では、このf01という原子番号と座標を記したファイルのみで行う第一原理計算を用いています。     
図1

次に対称性を考慮するために必要な対称軌道データ(f25)の内容を図2に示めします。
図2

>makef05でf05ファイル作成し、>dvscat nで分子軌道計算を行います。計算はdvscat1回で自動的に10回の分子軌道計算の繰り返しが行われるように設定されています。収束状況はf06zで確認できます。初期値と終値が一致すれば,収束したといえます。この計算では29回の分子軌道計算で収束しました。出力データはf08に書き出されますが,分子軌道エネルギーはf08eに出力されます。図3に得られた分子軌道エネルギーf08eの内容を示します。
図3
    
プログラム"lvlshm"を用いることにより分子軌道エネルギーのレベル構造を図にプロットすることができます。このプログラムに必要な入力ファイルはl04、l05であり、>makel04で作成できます。得られたl04ファイルを図4のように修正し、>lvlshm n で計算するとl07ファイルが得られます。このファイルを>dvplot で実行すると図5のようにエネルギー準位図が得られます。
図4

図5

このイオン内の電荷分布(イオン性)について調べるため、>nect n を実行します。得られるファイルはi08で、その内容を図6に示します。
図6

図6から有効電荷はN:+0.94、O:-0.65であり形式電荷N5+、O2-から大きくずれていることがわかります。これはN-O間に強い共有結合性が存在することを示唆しています。
共有結合性を調べるために、>bndodr n を実行するとbn8ファイルが得られます。その内容を図7に示します。
図7

N-O間の値は非対角要素1.1753+1.0821=2.2574となります。この値は三本のN-O間結合の和であるので一本あたりは0.752となります。この値はかなり強い共有結合性に相当します。

以上の計算によりNO3-イオンの結合性について評価することができます。