研究内容


高精度の台風強度予測モデルの開発

台風の持つエネルギーは海面にかかる抗力により常に奪われ続け、海から台風へと供給される熱量が少ないと台風は減衰します。台風の進路は、主に気圧配置により決定され、その予測精度は向上しています。しかし、台風の強度予測は、直接観察が難しいことなどから、正確なモデルが確立していません。そこで、九州大学が保有する台風シミュレーション水槽を用いて、気液界面における運動量輸送や風波の測定・解析を行い、台風下の海面を通しての運動量の輸送機構の解明に取り組みます。

九州大学 応用力学研究所 海洋環境シミュレーション水槽

コロナ感染対策関連研究・開発

流体工学の視点から、新型コロナウイルスの感染経路の検証や解明を行います。レーザーを使用した呼吸流れの可視化実験により、マスクの有無やフェイスシールドの効果を示しました。隙間がなく快適に着用できる高性能なマスク開発のために、マスク内外での粒子濃度の測定やソフトを使ったマスク形状の評価に取り組みます。同時にシミュレーションでの検証を行います。

マスク周り流れ動画vol.1(マスクなしVSマスクあり)

マスク周り流れ動画vol.3(測定装置セットアップ)

マスク周り流れ動画vol.6(ウイルス飛沫は呼吸流れに乗って流れるのか)(エクセル計算)

マスク周り流れ動画vol.12(マウスシールド)

直交脈動噴流における微粒化の観察

次世代ジェットエンジンの開発にあたり、燃焼振動の抑制が課題となっています。実機による燃焼試験と数値解析手法から、燃焼振動時に断続的な燃料の噴霧が起こり、燃焼時の微粒化や粒径が挙動に影響を及ぼすことが明らかになっています。そこで、燃料噴霧時の微粒化現象に注目し、断続的な高周波脈動噴霧を可能とする装置の製作を行います。装置を用い、脈動噴霧における液滴の微粒化挙動の観察に取り組みます。

20Hz脈動噴流の微粒化挙動の様子。左:59m/s、右:134m/s。第27回微粒化シンポジウムにて報告。

数値計算による骨髄中での薬物動態の解明

開放骨折では傷口からの細菌感染が問題となっており、近年、この打開策としてCLAP法(Continuous Local Antibiotics Perfusion)が提案されています。このCLAP法では骨髄腔へ直接薬液を注入することで幹部へ高濃度の薬液を届けることが可能となります。共同研究者の医師による臨床試験を通してCLAP法の有用性が確認されていますが、骨髄内での薬液の詳細な拡散の様子については未だ解明されていません。そこで、数値流体計算ソフトを用いて、骨髄内での薬物拡散の様子を流体工学的見地から解明します。

濃度分布の様子
日本機械学会関西学生会2021年度学生員卒業研究発表講演会

高速液体吐出速度の評価

火薬の燃焼エネルギーを推進力として使用する次世代型のウォータージェット装置の試作機を使用した室内実験と、ANSYS/FLUENTソフトウェアを使用した流体の数値計算を行いました。ハイスピードカメラを用いて、火薬燃焼後のウォータージェット装置内部のピストン挙動を測定し、測定されたピストン挙動を入力データとして使用した流体の数値計算を行いました。図は、数値計算により得られたある瞬間のウォータージェット装置内部の液体の圧力と流速の様子です。液体は、図面左側からピストンにより押されることにより圧力が上昇し(左図の赤い部分)、図面右側の細管内部において速度が増加し(右図の赤い部分)、図面右端の細管出口より吐出される様子が分かります。

容器内の液圧と速度の分布(https://u-hyogo-webmag.com/archives/article/021020jet