台風
台風を制御するためには、台風がいかにして発達(減衰)するかを正確に知る必要があります。一般に、図3に示すように台風は海から大気への熱供給を受け発達することが知られています。一方で、台風の持つエネルギーは台風と接する地表面や海表面(地球表面)に働く抗力によって常に奪われ続けています。したがって、海から大気(台風)へと供給される熱量が少ないと、地球表面に奪われるエネルギーが卓越するため、台風は発達せず、むしろ減衰します。日本に上陸した台風が急激に減衰する理由の一つとして、地表面での抗力の増大に加えて地表面から台風への熱供給が非常に小さくなるため、台風のエネルギーが奪われ続ける点が挙げられます。このような台風の強度(発達するか減衰するか、強まるか弱まるか)を予測するために、台風に関連する数多くの物理モデルが組み込まれた気象予測モデルを用いて、スーパーコンピュータによる数値計算が行われます。台風の進路は、主に気圧配置により決まることが知られており、実際、気圧配置をスーパーコンピュータで正確に再現できるようになったことにより、台風進路予測の精度は過去40年間で大きく向上しています。しかし、本プロジェクトで対象とするような台風強度の予測精度はあまり向上していません。その原因の1つとして、台風と海表面との間での運動量および熱の輸送機構が明らかになっていない、つまり、不確かな運動量と熱の輸送モデルが使用されているという問題点が指摘されています。その指摘に関しては、台風の直接観察や測定の難しさから、容易に台風に関わる輸送現象を明らかにできていないという現状があります。