最近の研究テーマ


1.ヒト因子由来再構成型タンパク質合成系の樹立及びそれを利用した翻訳研究
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タンパク質合成(翻訳)はリボソームと多くの翻訳因子によって行われています。それらを全部精製し試験管内で混ぜることにより再構成型タンパク質合成系をつくることができます。我々は、リボソームと翻訳因子をヒト由来にすることによりヒト因子由来再構成型タンパク質合成系の樹立に成功しています。そしてその系を利用して、翻訳のメカニズムを解明しています。



2.人工細胞の樹立とそれを用いた病態モデルの確立
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細胞は切り詰めれば個々の生体分子からできています。逆に考えると、それらの分子をうまく組み合わせれば細胞ができるかも知れません。我々はこのボトムアップ的手法で人の細胞を再構築し、様々な病態モデルを確立していこうと考えています。例えば、ハンチントン病などタンパク質が凝集して神経疾患を起こす病気があります。この病気の実験モデルを人工細胞を用いて構築しています。



3.コロナウイルスを始めとする病原ウイルスに対する薬剤スクリーニング: 試験管内タンパク質合成系を利用して
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図1 コロナウイルスの翻訳
コロナウイルスのゲノムRNAは約3万塩基にも及び、まず二つの大きなポリプロテインが翻訳される。小さいポリプロテインは通常の翻訳で合成されるが、大きい産物はフレームシフトという機構が働くことで生み出され、RNA合成酵素が合成される。RNA合成酵素はゲノムRNAの複製やサブゲノミックRNAの合成を行い、結果的にウイルス増殖に繋がる。

図2 コロナウイルス翻訳実験
新型コロナウイルスのゲノムRNAからフレームシフトに関与する部分だけを取り出し発現ベクター(試験管内翻訳系用)に組み込む。その際、フレームシフトが起こればEGFP (蛍光タンパク質)が合成されるように工夫している。

図3 新型コロナウイルスのフレームシフト阻害剤探索
発現ベクター(図2)を試験管内翻訳系に投入し、プレートウェルに分配する。各々のウエルには薬剤が予め塗布されており、もしその薬剤がフレームシフトを阻害すれば蛍光の低下が見られる。