研究テーマ
研究概要
熱化学研究グループでは熱力学を化学平衡や化学反応の分野に応用した化学熱力学に関連する研究を行っています。平衡論的・速度論的な観点から、物質とエネルギーの関係を理解し利用することを根幹に置いています。
基礎的な研究として、酸化物や合金の標準生成ギブズエネルギーを含めた(A)熱力学諸量の決定に関する研究を行っています。主に二つの方法を用いています。一つ目は極低温から高温に至る物質の熱容量測定をもとにした熱量計法です。二つ目は、固体電解質を用いた起電力法です。固体電解質を用いて酸素濃淡電池を作製し、その起電力を測定することで、目的物質の標準生成ギブズエネルギーを決定します。また、これらの結果に基づいた化学平衡図の作成も行っています。
一方で、溶融塩やアルコール類などの(B)非水溶液を用いる機能材料の電解作製を行っています。これまで,イオン液体やアルコールの一種であるエチレングリコールを溶媒に用い、亜鉛や亜鉛合金めっきについて研究を行ってきました。最近では、熱電変換材料薄膜の電解作製を行っています。また、脱合金法を用いる(C)合金構造を利用した多孔質構造制御に関する研究として多孔質触媒材料を作製する研究や、これにMOFsMetal Organic Frameworksを修飾することで触媒活性を向上させる研究を行っています。
カーボンニュートラル達成のため、(D)水素社会実現に向けた高効率水素生成に関する研究として、希少で高価な白金を使用しない、水電解用の電極の作製や水素化合物から水素を取り出す水素生成触媒の研究を行っています。
(A)熱力学諸量の決定
対象物質の溶解熱測定と定圧熱容量測定を組み合わせる方法です.定圧熱容量を温度の関数として測定すると熱力学第三法則に従って第三法則エントロピーが決定できます.また,構成元素の第三法則エントロピーと合わせると標準生成反応をもとに標準生成エントロピーが決定できます.さらに,溶解熱測定から標準生成エンタルピーを知りことができると,標準生成ギブズエネルギーが決定できます.研究結果は,計算状態図や新材料の設計・製造プロセスに応用できます.
固体電解質を用いる起電力法は,酸素イオン伝導体である固体電解質を用いて酸素濃淡電池を作製し,その起電力を測定する方法です.起電力から平衡酸素分圧を知ることができ,平衡定数や電池反応の標準反応ギブズエネルギーが明らかとなり,さらに対象物質の標準生成ギブズエネルギーを決定することができます.材料の高温酸化特性の評価や化学平衡図の作成に役立ちます.
(B)非水溶液を用いる機能材料の電解作製
溶融塩やイオン液体,アルコール類などの非水溶液を金属や合金を電解析出するための溶媒として利用しています.これまで,イオン液体やアルコールの一種であるエチレングリコールを溶媒に用い,高耐食性を有する亜鉛合金めっきに関する研究を行ってきました.最近では,熱電変換材料の電解作製について研究を行っています.これでは,エチレングリコール非水溶液やAlCl3-NaCl-KCl溶融塩を用いて,Zn-Sb系,Co-Sb系,Fe-Al系,Bi-Te系などの熱電変換材料の電解作製について研究を行ってきました.
グルーブボックス
(C)合金構造を利用した多孔質構造制御
合金構造を利用した多孔質触媒の作製に関する研究を行っています.触媒前駆体としてアモルファス合金を利用し,この合金に化学処理を施すことで選択的に合金中の一成分を溶出させることができる脱合金法を用いて,多孔質構造を制御する研究を行っています.また,この多孔質触媒上に金属有機構造体(MOFs)を修飾することで触媒活性を向上させる研究も行っています.
MOFs修飾多孔質触媒(右)
(D)水素社会実現に向けた高効率水素生成
カーボンニュートラル実現に向け,水素エネルギーを普及させる「水素社会」の構築が重要です.本研究では,水素製造法としてアルカリ水電気分解に着目し,希少で高価な白金に代わる材料を模索しています.白金に電子構造が類似するタングステン炭化物(WC)が候補として挙げられてきましたが,WC自体に活性はありません.そこで,WCと遷移金属の相互作用を期待し,WC粉末をNiやCoを結合相として焼結した超硬合金を検討しています.
特許:特願2023-133541,特許第7744643号
水素社会の実現に向け,水素の安全性確保や容易な貯蔵・運搬手法の確立が課題となっています.様々な検討がなされていますが,その中で,室温で液体または固体として安定な高水素含有化合物として水素を保存し,必要に応じて水素を取り出す方法が注目されています.アンモニアボラン(NH3BH3)やギ酸(HCOOH)は水素含有率が高く,通常の貯蔵条件下で安定です.これら高水素含有化合物から水素を取り出すためには触媒が必要不可欠で,水素生成反応において効率良く水素を取り出すことができる触媒の開発を目指しています.
令和6年度の研究テーマ
- 修士論文
- 固体電解質を用いた起電力法によるMn2BおよびMnBの標準生成ギブズエネルギーの決定
- 極低温からの熱容量測定に基づくBi2Te3の熱力学諸量の決定
- エチレングリコール-ZnCl2-SbCl3非水溶液におけるZn-Sb系熱電変換材料の電解作製
- エチレングリコール-SbCl3-TeCl4非水溶液におけるSb-Te系熱電変換材料の電解作製
- タングステン炭化物焼結合金を用いた水の電気分解による水素生成
- 卒業論文
- エチレングリコール-SbCl3-TeCl4非水溶液を用いたSb-Te系熱電変換材料の定電位電解作製
- エチレングリコール-BiCl3-SbCl3非水溶液を用いたBi-Sb系熱電変換材料の電解作製
- Co-Fe合金をドープしたタングステン炭化物の水素生成触媒活性
- WC-Ni焼結合金の水電解カソード電極への応用






